Sound Lab Kichizyo

Ableton Liveのアレコレ

Free Guide: Mixing with iZotopeの要点を纏める その4

続きものです

その1から順番にリンクは以下です。

kichizyo.hatenablog.jp

 

kichizyo.hatenablog.jp

 

kichizyo.hatenablog.jp

 

長かったMixing with iZotopeのシリーズも、とうとう終わりです。そしてこの最後の記事ですが、正直微妙な内容です!各楽器の注意点みたいなものが内容になりますが、その内容が、大体全部

楽器と音色による

の一言です。確かにその通りなので仕方ないですが、、、とりあえず纏めたので、いってみます!

 

Drum Mix Tips

・ドラムトラックは個別の音色を編集し、Busトラックにそれぞれの音を繋げる様にする。個別の音を編集し、さらにドラム全体の音をまとめる為に、Stereo Busは必須である。

 

Kick

・先ずは EQ。人間の耳は、200hz~500hzを、鈍くずんぐりした音、600hz~1khzを、こもった、狭苦しい音、2khz~4khzを、尖ったカチッとしたクリックっぽい音、のように認識する。この辺りの周波数は、特に注意するべきである。

 

・Low endは強調したいが、KickのLow endには様々な要素が含まれていて、Bassとの組み合わせが重要。この為、30hz以下の音は、ハイパスフィルターで削ると、Bassとよく噛み合う事が多い。

 

・KickにCompを使いたい時、低い2:1前後のRatio設定は、Volumeを増やし、スムーズな結果に繋がる事が多い。音の強弱の、微妙な調節が重要である。

 

Snare & Tom

・EQのセッティングは、スネアの音色によるので難しい。例えばあるスネアは丸みのある良い音が200hz~250hzにあり、別のスネアだったら、その周波数は邪魔になる、べたついた音だったりする。

 

・どの音(周波数)を強調させ、どの音抑えるかは、全体のドラムサウンドを聞いてから決める。

 

・よくある事象として、スネアの snap音(カチッ、パチッという音)の響きが、歯擦音と被り、耳障りな音となる。これは3hz~5khzで起こる現象。スネアの音は、特にVocalを流しながらMixすると、どの周波数がVocalとマスキングしているかよくわかる。

 

・Compを使う場合、Kickと同じ様に、音の輪郭を殺さない程度に、Attackを調整して、薄くかけるのが基本である。

 

Overhead & Ambient Drum Mic (ドラムの全体音)

・この全体音から、Mixを始めるエンジニアも少なくない。全体録音の為に何個マイクを使っているか、MonoマイクかStereoマイクか、マイクの位置は上部か、部屋のサイズはどうか、これらによってEQのセッティングは変わるが、ドラム全体の雰囲気を掴むには、先ずこれを聞いてみるのが良い。

 

・Low endを大きくカットすると、音を引き締めまごつかない音になる。この加工をしたトラック単体で聞くと不自然な音だが、全体で聞くと馴染み、有効な場合が多い。

 

・全体音において、シンバル音は邪魔になる事が多い。この場合はDeEsserを使ったりEQでピンポイントの場所を削ったりして、余計な音を消すと良い。

 

・試す価値がある一つの手法として、MS 処理がある。全体音のトラックにMS処理をかけ、Sideは高音を上げる設定をすると、ドラムのStereo感が広がる。

 

・Transient Shaperが有効な場合が多い。強調したいAttack音はどこかを考えて使うと良い。

 

Percussion

・シェイカー、タンバリン、コンガ、ティンパニ、エレクトロ系等。

 

・EQはそのパーカッションの音色によるが、基本は今までにあった通り不要な帯域を削り、必要な部分を上げる。そのトラックSoloで聞いたら不自然でも、全体で聞く場合、意外に馴染む事が多いのが、パーカッションである。

 

・コンプは高いRatioでガッツリかけるのがハマることが多い。5:1~8:1位のRatioで、AttackとReleaseも、Fastで設定すると効果的な場合が多々ある。Releaseは遅くても20ms位で設定すると良い。パーカッションはビートのメインではないので、控えめが原則。Volumeレベルは低く、Panも均等になるように、あくまでリズム感を足すものとして考える。

 

Bass Mix Tips

・KickとBassの関係がLow endを決定するが、Low end設定の目標は、音を籠らせる事なく、どちらかを極端に削る事もなく、両方の存在感を力強く保つことである。

 

・多くのエンジニアの経験則では、BassかKickか、どちらをLow endで勝たせるかをまず決定させる事が重要である。例えばBassがLow endに厚みを持たせるような音作りで、基礎トーンが低い音程に存在する場合は、BassのLowを勝たせる。他にも、Kickの音は抜けさせたいという場合、Kickが長めの太い音で、Sub Kickも加えたい、など音によって、曲によって、好みによってこの選択をする必要がある。

 

・Low endで強調させる楽器を決めたら、EQを使い、一方がもう一方の周波数を包むような設定をすると良い。例えばKickの80hzを強調したいなら、Bassの80hzはEQで下げ、80hzを挟むように、40hzと120hzを強調する。この関係性を入れ替えたりして、落ち着く所探すと、満遍なくLow endを生かすことが出来る。

 

・2khz~5khzの高音に、Bassのトーンの良い音がある場合は多い。このエリアの周波数編集は、もちろん EQ でも良いが、Distortionが良い結果を出す事も多い。一般的に、Tube系DistortionはLow endを持ち上げ、Tape系DistortionはMid~High endに効く。この為に2~5khzでは、Tape系Distortionが活躍する。

 

・どの EQ やDistortionを使っても、必ずBypassのオンオフを繰り返し、周波数を見て、目と耳両方で違いを確認する。

 

・コンプはどのようにBassがプレイされているかで変わる。

 

  1. アップライトBassなら、Attack timeとRelease timeは、中レベルで。Ratioは、小もしくは中レベルでコンプをかける場合が多い。
  2. ピック弾きや、親指で弾くファンクっぽい、言われるSlap Bassなら、音の出音、頭の部分をコントロールするために、Attack time、Release Timeは、共にFastで設定するのが基本である。ただし、あまり音の頭を潰しすぎないように、RatioやThresholdには特に注意する。
  3. 指で弾かれたエレキBassの場合Attack time、Release timeは、共に中レベルになる。Ratioはこの場合、3:1から6:1の範囲に収めることが多いが、11:1のような特に高いRatioになる事もある。弾き方によるとしか言えない。ただ、ここで重要なのは、どれぐらいのGain Reductionがあるかで、軽く音を潰す程度の場合は-2から-3db、そこそこ潰す場合は、-6db位。この際、Make up gainや、Auto gainでVolumeを適切に調整することを忘れないようにする。Volumeのロスを防ぐようにする。

 

・この二つの楽器は、Side chain compでお互いを生かす方法もある。例えばBassトラックにCompを入れて、Kickが鳴る時だけ、Bassの音を押さえつけるようにするのが一般的。不自然でなくVolume Levelも変えすぎないように。この方法は、Keyboard等、他の楽器にも応用が利く。Compを強く効かせると、独特なノリが発生し、実験的な音を作り上げることが出来る。


・Bassはリズム楽器の特徴を持ちつつ、ハーモニーも作れる楽器なので、Mixで一番難しいと言える。Kickは常に同じトーンだが、Bassは頻繁にトーンが変わる。この為、オートメーションでGainやEQの値を変える人も多い。

 

・Sub Bassに関して

 

  1. KickとBass、どちらかを勝たせるかは曲による。Bass Lineを聞かせるか、Kickの存在感を出すか、どちらかで判断する
  2. Hzを理解するのが重要。40~70Hz位までが一般的にSub Bassと考えられるが、40以下は聞こえにくい。70~100hzが普通のベース
  3. Saturationで倍音を足すと、Lineが際立つ
  4. とにかくBassを聞かせたい時はSub bassにローパスをかけ、70hz以上をCut、さらに別の明るいベースを重ね、明るいベースはハイパスで70hz以下をカット、という方法がある
Waves hiphop low-end lectureより

・これはYoutubeのレクチャーを纏めたものです。一緒に書いてあったので、ついでに纏めます。これも元の動画を見失いました。ざっくりした内容は以下です。


・多くの人は、100万円のスピーカーを持っているわけではない、ので、低いFrequencyよりも、高いFrequencyでBassを目立たせる事は重要。これにWaves Vitaminは良い。


・低いFreqは完全にMono。また、Soloボタンを使って、どのFreqを際立たせるか考える


・動画では、Vitaminで作った音をPuig tech EQを指して、音を調整。Puig techでLow-endをスムースにするイメージ


・Kickに関して。特に808Kick。Kickの為にいくつかのEQを組み合わせるのも重要。EQやCompには、通しただけで音が変わる物もある。このMovieの場合、Waves F6を使っていたが、もちろん代用可能。F6(EQプラスCompの様なPlug in)の使い方で特徴的なのは以下

 

  • Kickを目立たせる為、56Hz以下をHi-passでCut→Bassとの住み分けと、Highを際立たせる事で、Kickのリズム感を明確にする
  • 6~7Khzを上げることで、Kickのアタックを際立たせる。KickのHiを上げることで、より際立たせる。
  • SSL Buss CompでさらにHighを目立たせる。SoloでKickを聞くと奇妙な音になるが、Bassとの組み合わせを聞くと馴染む事が多い
  • この人は、さらにKickにパンチを出すために、Waves Api Eqを使って、5khzと500hzを持ち上げていた。これでKickが明るくなる。この808KickとBassの音の関係性を考えずに、両方の音を際立たせようとするのが、良くあるルーキーミステイク。KickとBassは必ずセットで考える
  • Bassの音の美味しい部分見つけ、KickのBassのメイン部分とマスキングしている場所をガッツリ削る。特に808Kickは、これでBassとの音の分離を作る。Kickのパンチと、Bassの美味しい音で、Low-endのボリューム感が丁度良くなる
  • どうしてもマスキングする場合は、Side Chain機能で、Bassの良い音を殺さないように、Bassが鳴った時だけKickの特定の周波数だけ削る様にする。ここまでやると、低音の圧力が、同じ音量と思えない位全然違う。

 

・これはHiphop用やから、ジャンルによって違いを考える。

 

Guitar Mix Tips

Acoustic guitar

・軽い音で前に出し、音を目立たせて使うか、分厚く、重い音で他の楽器のサポートとして使うか、Acoustic Guitarは様々な役割がある。先ず、アコギはサポートかメインか、役割をはっきり決める必要がある。

 

・サポートとして使う場合、DrumやVocalとの衝突を避ける必要がある。このため100hz~200hz以下をハイパスフィルターでカット、また4khz~6khz辺りで、Vocalとぶつかることが良くある為、そこを探して削ると良い。

 

・音をわざと痩せさせることで、際立たせる手法もある。単体で聞くと不自然な感じがするが、他の帯域を削ることで、残った帯域の音が際立ち、全体で聴くと馴染む事が多い。

 

Electric Guitar

・どの周波数でも、特徴が満遍なく聞こえる程音の幅が広い為、決まったEQ設定は無い

 

・クリーンなElectric GuitarはCompがとても効果的な傾向がある。「4MixにおけるDynamics process(Comp等)」で説明したように、DistortionにはCompの性質がある為、歪みのあるGuitarにCompは基本的に必要ない。

 

Distortionを使った場、歪みを奥深くさせる手法として、Harmonic exciterで歪みの倍音を微かに膨らませ、Chorusでさらに深みを出す、という手がある。

 

・Mixで音が集まりすぎて団子になっている時は、Pan設定が一番効果的な方法である。トラックの複製を作りそれぞれを大きく左右対極に振る、という手法は、団子になったMixを改善し、Stereoの幅を広げる。これはAcousticGuitarでも大変効果的な手法である。

 

Keyboard Mix Tips

・Keyboardは、その周波数帯域の広さの為、Mixが大変難しい楽器の一つである。Stereoとハーモニーのフィールドを幅広く占める楽器の為、どの歌曲でも主張が強くならざるを得ない。

 

・この為場合によっては、極端なEQ設定を行い、欲しい音だけを選び抜いて、その部分だけをMixに馴染ませる作業が必要な時がある。

 

・エンジニアはPianoやKeyboardは、ステレオ全体から音が鳴る事を避け、Pan設定で、左右どちらかに振る場合が多い。
これはステージ上でメインとなるバンドを際立たせるというのが一点、また実際のステージを考えてみても、ピアノが中心にあり左手の音をPanで左に振り、左側スピーカーから、右手の音をPanで右に振り、右側スピーカーから音を出すような設定は、通常有り得ない。どちらかに全体を振り、Stereoフィールドに、他の楽器の為の余白を残す方が、より自然なあり方である。

 

・Com等のDynamics Processingは、KeyboardやPianoでは繊細に行う必要がある。頻繁にBypassのオンオフで確認しないと、音を潰しすぎてVolume Upしすぎてしまう傾向があるのが、鍵盤楽器である。Ratioは1:4~2:1程度の低Ratioで、Compの重ねがけが多用される。軽いCompの重ね掛けは、クリアなCompの効果が期待でき、この種の楽器に多用される。

 

Vocal Mix Tips

Lead Vocal

・良い環境で上手に録音された、上手いVocalは、その分Mixの手間も少ない。先ずはVocalの録音環境が一番重要と考えるべき。

 

・ハイパスフィルターで不要なLow endをカットする。

 

・EQもしくはDe-esserで歯擦音をカットする。

 

・特定周波数へのEQのコツとして、マイクの種類や、録音環境の特徴を考え、不要な音(鼻にかかった音や不要な高音)などを削る。

 

・CompはVocalのVolumeが最も大きくなる場所で、-2db~3db位のGain reductionを目安にして、調整を始めると良い。この際良く使われるのは、Multi band compである。最もVolumeが大きい場所を見つけ、その中でも、最もVolumeの増大がある帯域をMulti band compで削ると、最小限のコンプで特定周波数のVolumeのみを抑えることが出来る。

 

・Vocalの最も個性の出るおいしい周波数帯域を、EQで少し上げる。これは男性、女性、個人で違い、個性の出る所で、ミックスエンジニアの目の付け所が重要になる。Air感が欲しい時は、シェルビング EQ でHigh endを上げる。

 

・全体にかけるCompはAttackは中レベルで、ReleaseはFastの設定でかけるのが基本だが、Vocalのパフォーマンスによって、Compにもオートメーションを使ったり、細かい調整が有効な場合もある。

 

・気づいたらCompをかけすぎていた、という時には、もう一度最初に戻って、他の解決方法(オートメーション、EQ、De-esser)などを試すのが良い。基本は軽いCompである。

 

・Tape Saturationが、Vocalの高音を伸ばすのに有効である。

 

・良いPlate Reverb、アナログスタイルのDelay、クリーンなデジタルエコーなど、空間系はVocalに必須である。Sendから掛けるのが一般的。

 

・Reverbで、反響音のHigh endにフィルターをかける機能を持つものがある。Reverbのかけ過ぎで、High endに求めていないスペースを作り過ぎるようなら、Reverbの反響音を歯擦音がするhzより下位で、ローパスフィルターをかけると良い場合がある。

 

・Wet 8%以下の、薄いChorusをかけると、Vocalを改善する事がある。これはジャンルや声質による。

 

Background Vocal

・同じ歌詞でハモるVocalはVolume調整に気を付ける。ハモリの方がメロディーが良い場合もあるので、よく考えるべき。

 

・Pad音のように、「アー」や「オー」でハモる場合は、一般的にLead VocalよりCompを強めにかける。さらにハイパスフィルターを使い、Low endを大きく削る。Pan設定も、左右どちらかにしっかり振る。もしくはトラックを複製しそれぞれ極端に左右に振る、という方法もあるが、これはGuitarやKeyboardとの兼ね合いで、優先を決める。

 

Mixing within the song structure(編曲的Mix)

・所謂、曲をより凝った作りにするためのMix例えばバース(A メロ、Bメロ、Cメロ等)から、コーラス(サビ)への移り変わり、またセクションから別のセクションへの変調の際に、Mixに細かい変化を入れる事で、曲がより完成されたものとなる。

 

・バース(A メロ、Bメロ、Cメロ等)のトラック数は、コーラス(サビ)より少なくすると良い。別のバースやセクションへ移る度に、何かしら新しいものを登場させる作りが一般的。アーティストが全ての素材をMixエンジニアに渡すという事は滅多にない。何かをカットしたり、ミュートしたり、パーツにアレンジを加えるのも、エンジニアの領域である。

 

・バースのPan設定は絞りめで、コーラスのPan設定を広げて盛り上げるという手法がある。極端に左右に振った音をコーラス時に加えたり、すでにバースで登場していた楽器のPan設定を、よりステレオに広げたりする。この際、トラック複製から極端な左右へのPan設定、というテクニックがバッキングギター等には特に有効である。

 

・バースのLow endとHigh endは控えめに、コーラスで全ての帯域を十分に使うようにすると、コーラスに盛り上がりが出る。

 

・バースにエフェクトをかける時は、Monoで、また全体的にエフェクトのDecay Timeを短くし、逆にコーラスにエフェクトをかける際には、同じエフェクトでもStereoで、長いDecay Timeのエフェクトを使う方法があり、これは極端にコーラスでの盛り上がりを加える。

 

・あるいは、バースでは、Distortionを少し、もしくは全く使わないようにして、コーラスが近づくにつれ、徐々にDistortionを上げていくという方法もある。Harmonyが広がりを見せる。あくまでSendから少しずつかけるようにする。

 

・Druの全体マイクも、コーラスの盛り上げに使える。これには二つの方法がある。

 

  1. コーラスの際、Drumの全体マイクのVolumeを上げ、Stereo Imageを広げる。MS処理で、Sideの音を上げるのも良い。
  2. コーラスの際、逆にDrumの全体マイクのVolumeを下げ、GuitarやKeyboardのステレオ感をその分上げる。Harmonyを作る楽器に、スペースをより与える、という発想である。

 

・オートメーションはバースやセクション毎に、Volumeを変えたり、Vocalを強調させたり、様々な用途で使われるが、オートメーションに決まったルールは無く、Mixに合うように自由に使うと良い。

 

以上です!

無理やり纏めた感あります。八千字超えました。iZotopeシリーズのネタも終わって、スッキリしました!ありがとうございました!