Sound Lab Kichizyo

Ableton Liveのアレコレ

テンションの作成とオートメーションのパターン化 その1

何となく曲がイケてない時

ある程度曲が完成したけど、何となく細部が詰めれてないというか、もう少しこう、動きが無いんですか?みたいになる時がよくあります。そういう時にどうしたら良いのか、というのを一度調べてみたのですが、テンションの作成とオートメーションはその解決に大いに役立つと思い、その具体的な使い方を、備忘録も兼ねて書いてみようと思いました。

 

ちょっと話が脱線しますが、何度か書いている、Ableoton出版の

Making Music: 74 Creative Strategies for Electronic Music Producers

にも、このテンションに関しての言及があります。Dramatic Arcに関する説明で、このDramatic Arcという考え方は、映画やドラマ等の制作にも使われる考え方だそうです。

 

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このExpositionの部分では、曲の要素を紹介していく段階です。メロディーとか、コードとか、リズムとか。映画でいうと、時代や情勢、登場人物の紹介のようなものだそうです。

次のRising Actionで出てくるのがテンションです。一番の聞かせどころのClimaxに向けて、Expositionで出てきた部分を発展させ、楽曲の密度を高め、特に聞かせたい部分へのテンションを緊張させていきます。

Faling Actionは、そのテンションの緩和で、図のように、Rising Actionの反対の動きをする事が多くあります。DenouementもExpositionの反対の動き、音を抜いて行ったりとか、そういう動きが入ります。めちゃくちゃ端折りましたが、本ではこんな感じの説明でした。

 

ハーモニー単位でも、9thや13th等に代表される、コードのテンションが存在しますし、構成でも、テンションの緊張と緩和というのは、2-5-1なんかで代表される動きがあります。ジャズミュージシャンなんかは、このテンションの緊張と緩和を絶妙に、意味分からないレベルで使いこなしている訳ですね。しかし、今回はエレクトロニック・ミュージックの話なので、その辺りには触りません。というか、ジャズが弾ける訳ではないので、そんな話出来ません。

このDramatic Arc。これはエレクトロニック・ミュージックの楽曲を、かなりマクロな視点で見た、構成上のテンションの流れと言えると思います。今回はそうではなく、エレクトロニックの楽曲に関する、もっとミクロな部分のテンション作成というものを考えていきたいと思います。ここで重要になるのが、オートメーションです。

 

次の段階への移行時

このミクロなテンションの緊張と緩和がどういう時に使われるかと言うと、楽曲が次のフェーズに移るときです。テンションを作ると、「次に何か起きるぞ」と予測が立ち、リスナーに緊張からの開放を与えると共に、楽曲のフローにもメリハリを作ります。Dramatic Arcの図で行くと、Climaxが、次のフェーズに移った瞬間になるのでしょうか。もちろん、例えば緊張と緩和を使いこなすジャズプレイヤーたちも、次のフェーズに移る時にも様々な手法を使って、テンションを作り、開放させていますが、エレクトロニック・ミュージックの場合、その手法も別のものが存在します。

 

この動画に詳しく書いています。

www.youtube.com

 

実はこのミクロなテンション作成は、皆無意識でやっています。この動画で紹介されていたのは、

  • ライザー、スネアのロール、その他FX
  • 何か楽曲の要素を抜く
  • オートメーション
  • 無音
  • 不協和音や短いFX音の挿入

個人的にちょっと分かりにくい、というか、マクロとミクロの設定がこの記事と違うので、勝手に少し変えました。この記事では、動画でマクロって言ってる所も、ミクロって言ってる所も両方ミクロです。この記事では楽曲の構成を一番大きな枠組みとして考えています。

さらに追加要素で

  • 同じノートやフレーズのリピート

なんかもあって良いと思います。こうして見てみると、ライザーやFX、オートメーション、フレーズの機械的なリピート以外は、アコースティックなジャンルでも行われている事のように思えます。

 

しかしながら、とりあえず、

曲が次の段階に移る時、上記箇条書きの事をしたら、テンションが生まれ、次の段階に移行しやすく、曲にも細かい表情が出る

と言って問題なかろうと思います。ちなみにこれらは重ねて使っても効果的でしょう、楽曲の要素を抜きつつ、短いFX音の挿入、とか。こういう細かい緊張と緩和が、曲をより充実させるのに必要だと思いました。

 

しかし、この中でも一番自由度が高く、難しいのはオートメーションだろうと思います。前置きが長くなりましたが、このオートメーションに関してもう少し掘り下げるのが今回の目的です。

 

何をどうオートメーションするのか

 では本題に入ります。今回は以下3つの記事を纏めました。

 

A Guide to Automation and Movement in Music | Hyperbits

8 automation tricks every producer must know | MusicRadar

https://www.izotope.com/en/learn/7-creative-automation-tips-for-music-producers.html

 

どの記事に関してもオートメーションの重要性や、所謂細かいオートメーションの調整が楽曲を生き生きとしたものにし、プロはこの辺りの調整がとても上手いのだ、という事です。で、具体的にどういった事をオートメーションで扱うのか。その基本からとりあげます。基本に関しては、1つ目の記事、

A Guide to Automation and Movement in Music | Hyperbits

の引用になります。

 

基本(エフェクト)

1.ボリューム 

適切なボリューム調整は、EQよりも重要と言われます。ボリュームは常に一定なわけではありません。サビになったら下げたり、逆に上げたり、その状況に合わせたボリューム調整を、オートメーションで細かく調整するのが良いです。

 

2.EQ

ローパスやハイパスにオートメーションをかけて、トラックを消す方法は、一般的ですが、細かい所では、新しいトラックが入る時に、そのトラックのスペースをEQのオートメーションを使って作ることも大事です。他のトラックとマスキングするところを削って、よりMix的な使い方も出来ます。

 

3.Saturation

デジタルに温かみを加えるSaturationも、オートメーションで調整すると効果的な場合があります。DriveやWetを調整して、例えばあるフレーズに向けて、徐々に音に温かみのある歪を加える、という手法も有ります。

 

4.Delay

珍しくはありますが、上記の記事ではDelayについても述べています。Delay Timeや、FeedBack、Mix Levelなんかを調整し、実験的な変化に挑戦する際に使えるとの事。Tape系やVintage系が良さそうです。

 

5.Reverb

これもあまりオートメーションのイメージと合いませんが、Decay TimeやPredelayを調整する事で、空間の大きさを変えるという使い方を述べています。何れにせよ、少しだけ変化を加え、Mixのスパイス的な使い方が良いようです。

 

6.Stereo Width & Panning

これはMix的なオートメーション使用法です。記事には書いていませんが、よく有る使い方として、サビに行くまでにはPanをあまり広げないように抑えておいて、サビに入る時に一気にステレオに広がりを出す、という方法は一般的です。

 

次は楽器です。

 

基本(楽器)

 

1.Velocity

これはMidiデータに限りますが、結構一般的ですね。Velocityで山や谷を細かく作って、フレーズにノリを出したり、グルーブ作成ツールで変化を与えたり、AbletonにはVelocityをランダム化させるツールも有ります。

 

2.シンセの基本パラメター

 よく使われるのはLFOでしょうか。他には、ピッチをコントロールしてライザーを入れたり、フィルターも有ります。リバーブやディレイが付いているシンセもありますので、無闇矢鱈にプラグインを挿すのではなく、シンセ内で完結できるならその方が良いでしょう。どのパラメターも、オートメーションの対象として、柔軟に考えることが重要です。

 

3.ADSR

これはあまり考えた事なかったのですが、記事で書いてある使い方は、Rの値やDの値の変化はかなりサウンドに影響するので、結構面白いと思います。

 

4.Layer

同じ種類の音を二つ以上組み合わせて、欲しい音を作る事をLayeringと呼びますが、このLayerを操作するという事です。しかし、Layerはマスキングが増えますし、例えば複数のOscillatorが付いているシンセは、最初からLayeringしていると言えます。重ねた音に、フィルターを入れたり、ADSRを変えたりと、様々な方法がありますが、どの音が優先されるべき音か、どの音にオートメーションするべきか、これも結構難しい所です。

 

 

より細かいオートメーションの編集へ

ここまでが、所謂、オートメーションで扱う基本パラメターとなります。確かに、多くの楽曲で使われるオートメーションはこれらの値だと思われます。

 

今回ではオートメーションに使われるエフェクトと、楽器のツマミの基本的な部分、という事で説明しましたが、次はより細かい、「この音こんな事してたんか!」というようなオートメーションの使い方を書いていきたいと思います。

 

が、長いので次の記事にします。ありがとうございました!

 

その2

kichizyo.hatenablog.jp

 

その3

kichizyo.hatenablog.jp