マスキングメーターに必要な機能
近年では、マスキングメーターはミックスの必需品になっています。従来のスペアナでも、ある音の波形を保存させて、その後他の音と比較させて、マスキングの場所を調べる、とかは出来ますが、普通に面倒くさいです。しかし、マスキングメーター(マルチトラック対応スペクトラム・アナライザーが正しいのか?)があれば、その辺りをもっと正確に、早く、簡単に作業できます。
iZotope Neutronのように、EQと連動していてマスキングメーター的な機能が付いているのは便利で素晴らしいですが、単純にマスキングメーターとしての機能のみが欲しいという事はよくあります。
「Neutronじゃなくて、このEQ使いたいんや!」
とか
「実機モデリングEQをスペアナ見ながら扱って、同時に他の音とのマスキングも見たい」
とか、そういう事が結構あるからです。それに、Neutronだと、3つ以上のトラックの比較も出来ません。
純粋に見やすくて軽いマスキングメーター
はそういう場合にやはり需要があります。
そこでVoxengo Span Plus
このVoxengo Span Plusですが、このマスキングメーターは、「こんなので良いんだよ」のマスキングメーター代表と言っても良いかと思います。一番良いのが、とにかく軽いです。私はマスキング気になるトラックあったら、とりあえず全部挿します。大したCPU負荷無いです。さらに、マスキングが気になるトラックに挿してたら、様々なトラックを実に素早く、最大6つまで同時に波形チェックできます。とても便利なプラグインです。
使い方は簡単です。
- トラックの色と名前を設定
- Exportナンバーを割当
- マスキング見たいトラックに挿したSpan Plusで、対象トラックをインポート(割り当てたExportナンバーをインポート)
これだけです。こちらのブログに詳しく書いています。
synthsonic.net
このブログの作者のゆにばす氏の言う通り、Modeを設定して(これも普通はDefaultでOKです)、ImportとExportを割り当てる、と本当にただこれだけです。簡単。
それと、Span Plusの設定ですが、この設定に関しての素晴らしい記事を見つけたので、リンク致します。
eki-docomokirai.hatenablog.com
このエキ氏、完全にプロの方ですが、そんな事まで書いてくれるんや!って感じの記事が沢山あります。参考になりました。ありがとうございました!
で、Span Plusですが、もう少し見てみると、Import/Exportボタンの横のStaticボタンを押しますと、Static Spectrum Editorなるものが出てきて、Takeボタンを押すことで、波形を停止させる事が出来ます。
ちなみに、このStatic Spectrum EditorでもModeボタンでハイレゾ設定やMaster設定等、ここから波形のタイプを変換できます。Static Spectrum Editor内にあるModeボタンですが、このボタンは、Import/Exportボタンの横にあるものと全く同じと思ってもらって問題有りません。連動してます。
そして、Modeボタンの横の歯車ボタンを押すと、さらに、2つ目の周波数を追加できます。この歯車ボタンも、このStatic Spectrum Editを開かなくても、普通に波形画面斜め上の歯車ボタンと連動しています。とりあえず見てみますと、
こんな感じで、2nd Spectrumを追加でき、更に波形のタイプも変えれます。この機能を使うと、波形タイプを例えばMaxとAVGにしてそれぞれの波形を停止させて比較させたりとか、そういう事も出来ます。
他にも色々メーターボタンを押すと、DBFSにしたり、LUFSにしたりとか、PNGボタンを押したら、その瞬間のスペクトラムをPNGファイルで保存させたりとか、色々機能があります。
それと注意点として、マニュアルにこういう文章がありました。
デフォルトでは、SPAN Plusはスペクトル表示にオクターブスロープごとに4.5 dBを使用するため、市場で入手可能な他のほとんどのスペクトルアナライザと比較して、より高い周波数に向かってかなり「波が高く」見えることに注意してください。
一応ご参考までに書いておきます。ちなみに、このSlopeも歯車ボタンで調整できます。
Neutronと使ってみる
ここで思ったことが、Neutronと併用すると、Neutronでマスキングの反応が出てる所をVoxengoではどんな感じか見れるな、と思いました。Neutronってどれくらいのマスキングで、どれくらい反応するのか、なんかも、Spanをと一緒に使うとよく分かるのではないかと思いました。
とりあえず、マスキングしてんなぁ!って感じのドラムとベースのサンプルを見つけて、フレーズ作成。最初のトラックが未加工。一小節空いて、加工しているトラックです。今回は分かりやすくするため、超手抜きして、極端な加工をしています。
soundcloud.com
この未加工トラックのドラムとベースのマスキングメーターはこんな感じになりました。NeutronのSensitivityはデフォルトの真ん中、Span Plusは分かりやすいようにアベレージモードを選択しました。
何かなるほどなぁって感じの周波数被り具合です。聞いても分かりますが、画像で見ると一目瞭然です。ここではDrumトラックに挿しているNeutronとSpan Plusの画像です。画像だと少し分かりづらいですが、やはりドラムのキック、この場合だと40hzと60hz辺りでしっかりマスキングしているのが分かります。
で、このマスキングを色々EQで小細工して、Neutronであまり反応しない位にしてみます。ガッツリ低音の良いとこ消えてますが、とりあえず今回は気にしないことにします。
マスキングはとりあえず消えている様です。ただ、ベースは動的なフレーズですので、Neutronのマスキングメーターが反応する場所もありました。一番反応が大きい場所でこれくらい?
視覚的にも、かなりマスキングが減っています。分かりやすい。一番Neutronの反応が大きいところでこの位なら、別に全然問題ないんじゃないでしょうか。こういう作業をNeutronとSpan Plusを併用すると、私達が音が濁ってるなぁ、と感じるのは、Neutronでこんな感じ、Span Plusでこんな感じ、と行った具合で、視覚的な指標が何となく出来ます。
それとなんですが、Span Plusで「あ、ここ大きくマスキングしてるな」って所から、少し遅れてNeutronのマスキングメーターは反応していたように思います。処理の複雑さを考えたら当然とは思いますが。レイテンシーが少ないのも、Span Plusの良いところと言えます。
別のトラックで、高音をマスキングさせて見ましたが、やはりSpan Plusだったら一目瞭然でよく見えます。
実機モデリングEQとの併用がナイス!
例えばWavesのPuigTecみたいなEQでも、このメーターを見ながらだと調整しやすいです。例えばギター二本のトラックで、こっちのギターはこの辺が美味しいので、この周波数を調整して、反対にこっちはこの周波数を下げよう、とか、そういう調整もリアルタイムでよく見えますし、同時にマスキング見れて良いです。
マスキングメーターはとても実用的ですが、意外に軽くて使いやすい、最低限かつかゆい所に手が届くマスキングメーターは少ないです。他のプラグインとの併用なんかもかんがえてみると、VoxengoのSpan Plusは、かなりアリな選択の様に思えます!
以上、ありがとうございました!