やってはいけない事からの分析
基本的にこういうのは、「こうするべき」というのより、「この使い方や考え方は避けるべき」という方が、自由度が高いですし、分かりやすい傾向がある気がしますので、こういうEQの使い方は避けるべき、という所から、様々なプロの方で、素人の私が勝手に「この人たちすげぇ!」と思ってる方々の動画や記事を参考にまとめていこうと思います。
ミニマムフェイズとリニアフェイズ
と言いつつ、先ずはミニマムフェイズとリニアフェイズEQの特性と注意点について調べました。
私が色々書くより、間違いなくこちらの記事を参考にしたほうが良かろうと思います。音源まで用意してくれている記事で、とても参考になります。
soundevotee.net
よくあるEQ Mistakes
ここからが今回の記事の本論になります。今回はこの動画です。
www.youtube.com
多くの超有名バンドのMix Engineerを勤めている、Warren Huart氏の動画です。有名な動画なので、見たことある人も沢山いると思いますが、先ずはココからいきます。タイトル通り、3つのEQ Mistakesに関してです。一つ一つ行きます。
1.Sweep EQの手法を使いすぎる
これは、この動画を見るまで、私もやってた間違いです。ちょっとココはしっかり書きたい所です。Sweep EQとは何ぞや、という所ですが、こういった具合に、QとGainを極端に大きくして、
Frequencyを動かして悪い音を探す。
そして見つけた悪い音を削る。
コレを繰り返して、音をスッキリとキレイにする!
というものですが、コレがいかん、という内容です。というのも、こんなふうに極端な音の聞き方をしたら、悪く聞こえるのが当然である。というのがWarren氏の話です。そもそもEQってこんな使い方するもんちゃう、という事です。この事に関しては、私のような奴が色々書くより、私も読者になっているEki氏のブログに詳しく書いています。
eki-docomokirai.hatenablog.com
余談ですが、SOUNDEVOTEEを書いているKojima氏のブログも、Eki氏のブログも、「ホンマこんなん無料で読ませてエエんか、、、」という内容が盛り沢山です。Cubaseユーザーで、決まった自由な時間が取れる生活をしていたら、受講してみたい位です。こういう人たちにMixとか習ったら、ほんとにすぐ上手くなるんだろうな、と思います。
で、このSweep EQですが、普通にプロも沢山やっています。ので、私がどうこう言えることでは無いんですが、なんでこういう事やってるんや、というのも、理由があるようです。
例えばこちら。その部分から再生されます。
youtu.be
ガッツリやっています。
Eki氏のブログにはこちらも載っていました。
youtu.be
ガッツリやってます。
ですが、この動画、2つとも同じ理由を述べています。特に2つ目の動画ですが、この方、クラシック畑から始まり、グラミーも取ってるMix Engineerだそうです。インタビューしている方は普通に笑っちゃっていますが、
”I didn't mix like this, but It's probably what making it sound so good, actually. Mine's probably sound worse because I wouldn't be taking that stuff out.”
みたいな事を言っています。
二人共、この手法をするときは、必ず不要なResonance、つまり、好ましくない反響音のみを選択して削る、という事でした。
私はどちらが良いかは分かりません。ただ単に、個人的にこのSweep EQやりすぎは良くないと、自分のやってるジャンルではそういう結果が多いと思って避けてるだけです。ただ、何が好ましくない反響音か判断できないなら、この手法はそもそも取るべきではないと考えて良さそうです。
そして、Warren Huart氏も、Sweep EQが悪いとは言っていません。あくまで極端な手法が悪い、という話です。上記で参照したEki氏も、決してSweep EQの手法を否定している訳ではなく、
- Qは少し太め(オクターブ間に影響が出るくらい)
- ゲインは6dB~12dB程度
という、ソフトなスイープを使うべきです。
と書いていますが、私もこの使い方が正しいと思いますし、実際自分がどの音が他のトラックと聞いた時にマズイことになっているのか、という耳の訓練にもなると思っています。
ただ、間違いないのは、
目的の無いEQは必要ない
という事だと思います。このシリーズの序文にも書いていますが、そもそもエフェクトなんて、無いなら無いだけ良い、というのが私の考え方ですし、目的の無いEQは不要、というのは、誰もが言っている所だと思われます。
2.High PassとLow Passを使おう
High Passに関しては、皆さんも普通に使ってると思います。特に私みたいにサンプルたくさん使ったエレクトロ系の音楽とか作ってたら、音数も異様に増えることもありますし、High Passが無かったら低音がメチャクチャな事になります。そういう音も許されてる風潮がこのジャンルには有りますが、、、例えばこちら。
www.youtube.com
これはこれで計算されていると勿論思いますが、これは流石に普通は許されないと思います。私はFlying lotusのファンなので、この曲大好きなんですが、初めて聞いたときは「こんなんアリか、、、まぁ、好きなんだからアリか、、、」と思いました。
とにかく、High Passはとても重要なのは、もちろんですが、Warren Huart氏はLow Passも積極的に使うことを進めています。
高音を上げると、Air感と良くエンジニアが表現しますが、そういうものが増して、抜けが出ます。ただ、音が薄くなり、耳を疲れさせる、という反面もあります。
良いエンジニアが手掛けた曲は、低音は勿論のこと、高音も非常に計算してコントロールされている、という事でした。
確かに、Air感とか色々有りますが、耳を疲れさせてはいけませんし、そもそも高音にも不要な音は沢山あります。
例えば、Warren Huart氏の動画では、Nordのパートに軽いHigh Passをかけ、さらに高音をしっかり持ち上げた後に、4K以上位をがっつりLow Passかけています。ギターにもLow Passを入れて7~8k位を削って、耳に触る音を削っています。
また、軽いLow Pass、軽いHigh Passも、実に便利だから積極的に使うように、という発言もありました。OffensiveなFrequencyを探しなさい。その際、自分の耳をしっかり信じなさい、との事でした。ここも同じ様に、低音が必要な理由、高音が必要な理由がない限り、思い切って削って良い。という、目的意識がある使い方が重要との事です。そうして作られた音が、本当にクリアな音であると言えます。
ちなみにですが、1のSweep EQを使いすぎの所で紹介した2つ目の動画。この方かなり変わった事沢山やってて、件の動画の9:15秒くらいから、異様なLow Passの使い方が出ています。コレは、インタビューのホストも、
「何やこのナンセンスなEQセッティングは!」
って言ってますが、このエンジニアの方曰く、
「レコーディングに使ったマイクの特性が、異様に高音がキツかったんや。ただ、実際ただ高音削っただけじゃなくて、後のプロセスで、適量の高音足してるんやで」
「なるほどな」
というやり取りがありました。私はこういう事しませんし、グラミー取ってるエンジニアに意見するなんて滅相もないっす!って感じなんですが、めっちゃ極端な事というのは間違いなかろうかと思います。ただ、こういうのにも、目的意識があって行っている、という事です。
3.EQは全体的な問題を修正するもの
何か変な訳ですが、言いたいことは、「この部分のみに良く作用するEQ」みたいな使い方は駄目。という事です。
例えばWarren Huart氏の動画では、ギターが普通の演奏の部分では、Lowがかなり邪魔になります。だからと言って、Lowをカットすると、ソロの時に物足りなくなる現象が起きています。
こういう時はどうするのか、ですが、EQにもオートメーションを入れて解決します。ソロの時になったら、低音をカットしているEQを切る訳です。
若しくは、後の記事に書いていますが、Dynaimic EQや、Multi band compでの解決、という方法が有ります。
問題点は一つのトラックでもいつも同じとは限らないので、その時その時に対応したEQingをやろうぜ!という話でした。
Dynamic EQとかMS EQとかは、またしっかり調べてやるべきと思いますので、このEQに真面目に取り組むシリーズで後ほど記事を書きます。ちなみに、私ダイナミックEQもMS EQも全然分からず使っていました。まぁ、今も良く分かって無いですけど。この辺りも反省を含めて、また書いてみたいと思います。
以上、ありがとうございました!