前回と同じ形式
前回の記事
kichizyo.hatenablog.jp
と同じで、「やってはいけない」からEQに取り組んでみます。今回の動画はこちらです。
www.youtube.com
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またWarren Huart氏の動画を一つです。2つ目の動画も結構再生回数がある有名な動画です。Musician on a Missionの制作者は、QueenやMorterhead等多くの有名なバンドを手掛けた方に師事し、様々なスタジオで学んだ方らしいです。前回の記事と重複する内容、また2つの動画で重複する内容は削っていってまとめます。一応これでやってはいけないからのアプローチは終了して、次の話に取り組みたいと思っています。
前回と同じ様に一つずついきます。長文になると思います!
1.問題点は、Mix BusのEQよりも、個別トラックのEQで解決するのが先
Mastering Engineerは、Mix Engineerとは別で、それぞれ別の知識やスキルが必要になる、というのはよく言われますが、マスタリングは、文字通りマスターにEQ等を使い、全体をより良い物に仕上げていく作業です。
その点、ミックスでは、個別のトラックを修正できる、というマスタリングの段階では出来ない事が出来るわけで、そこを有効活用しないといけない、という話でした。
例として、高音がちょっとキツすぎるので、マスターのEQで高音を削る。そうするとギターは良くなったが、ボーカルの良い高音も一緒に削れる、というような事になります。ドラムなんかも、周波数が広い範囲に渡っている事が多いので、BusトラックのEQで無理やり解決しようとすると、同じような事が起こるでしょう。Mix BusでのEQに関しては、また別の機会により具体的に考えていきたいと思いますが、Mix BusのEQは、個別のトラックを十分精査した後に、全体をよりまとめて良いものにするために使いましょう、という話でした。
2.明るすぎるMixは良くない。うるさすぎるMixも同じ様に良くない
大きい音や極端な高音は耳を疲れさせる、というのは当たり前の事ですが、人間の耳は普通に会話したりするのに重要な、3~5k辺りの周波数には特に敏感です。この辺りはEQの使用でも十分注意が必要です。
ここでは、休憩の重要性も述べられています。長い間大きな音量でMixをしていると、この辺りの周波数に対して耳が鈍くなってくるそうです。Warren Huart氏は、基本的にDimを押した小さな音量で作業して、たまに大きな音で少しの間聞く。そしてDimに戻る、というような作業をするそうです。でもAbleton LiveはDim無いですよね、、、
3.High PassとLowPassを使用しよう
これは前回の記事にも書きましたので省略します。前回も書きましたが、緩やかなFilteringを有効活用するのは重要です。
4.EQの使いすぎに注意
沢山のEQ処理を行って、「よし!やったで!」となるのはやめましょう、という内容です。とりあえず一回Bypassしてみて、本当に良くなってるのか確認するのが重要です。人間は、お金を払ったり、沢山時間をかけると、別に何も改善されてなくても良くなった、と思ってしまう、という事を誰かが言っていましたが、確かにそういう事もあるかもしれません。
これはプロでも良くあるんだそうです。いくつかのEQを使って、「う~ん、ココを上げよう、でもそしたらこっちが良くないか、下げよう」とやって、沢山処理した後に、Bypassすると、「あ、何かこのEQ違うわ」となるんだそうです。
こういう時は、ダイナミックEQの使用を提案していました。ダイナミックEQに関しては、また次に書きたいと思いますが、こちらのリンクからDynamic EQとは何か、をサラッと引用します。
blog.landr.com
ダイナミックEQは、従来のEQとコンプレッサーやエキスパンダーに見られるダイナミクスコントロール(音量コントロール)の要素を組み合わせたEQ処理の事です。
ダイナミックEQは従来のEQにある工夫を加えたものです。各バンドごとに固定のゲイン値を設定するのではなく、その周波数の音量に応じて、カットやブーストの強さを変えることができます。
複雑に聞こえるかもしれませんが、簡単に言うと、ダイナミックEQは、入力されたサウンドに応じてEQの量を自動的に調整する機能の事です。
この辺に付いても、具体例を見ながら次に記事を書きたいと思います。
5.ソロボタンを使いすぎちゃ駄目
ソロボタンが悪いと言っている訳ではありません。例えばボーカルのDe-essing等、その音の本当に繊細な問題点を探る為にソロボタンは必要です。が、ソロボタンを使いすぎると、その音のみの問題ばかりに集中してしまい、そもそも何でソロボタンで問題を解決しようとしたかが分からなくなる、という問題があります。
Mixの中でどの様に聞こえるかが重要で、全体の中での問題点の解決のために、音を精査すべきで、その為にソロボタンを使うべき、という話でした。ソロボタンのオンオフを細かく切り替えて聞くのも有効なテクニックだそうです。
さらに、ここは2つ目の動画でも言及がありますので、まとめて書きます。2つ目のMusician on a Missionの動画では、ソロンボタンをなるべく使うな。ソロボタンを多用し過ぎの時は、そのトラックのボリュームをあげて、良く聞こえるようにしろ、と言っています。確かに、一度EQに取り掛かっているトラックのボリュームを上げることで、他との関係をある程度残しながら、その音もよく聞くことが出来るので、一つの手法として知っていると良いと思いました。
また、ここではEQのブーストに関しても述べられていますが、それは後ほどまた書きます。
6.目的を持ってEQを使う
ここから2つ目の動画に入ります。ここに関しては、序文やその1でも書いていますので、省略します。EQを使うことが目的となってはいけない。EQを使う前に何をやりたいかを明確にすべき、という内容です。Referenceトラックと比較して、なぜ処理が必要なのか、どうしたいのかを明確にして下さい、という事でした。
7.EQをカットだけに使わない
これは1つ目の動画のWarren Huart氏も、ソロボタンの時の話の中で言及しています。私もそうでしたが、この考えは結構一般的に存在している気がします。学生時代に先輩に勧められた本に「EQは基本的に音をカットする目的で使うものです。不用意に音を足さないように。」と書いていたのを覚えています。そして、結構そう書いている本は多かったです。例えば、有名所ではこの本とかです。
Mixing Secrets for the Small Studio by Mike Senior
洋書にそう書いてるのが多い気もします。でも、これは間違いだという話でした。Warren Huart氏はブーストさせてからのコンプの使用というのは、音をグッと良くする手法と述べていますし、2つ目の動画でも、もうそんな意見は無視して、やりたかったらブーストしろ、って言ってます。ここもやはり、そうする理由が有るのならそうするべきだと思いました。
8.BusにもEQを使おう
個別トラックへのEQだけでなく、Busトラック、例えばVocal Bus、Drum Bus等、BusにもEQを使いましょう、という内容です。Drum Bus全体に、Hiを足したい、ギタートラック全体の中低域を絞る、等、一貫性を持たせた音作りが可能です。また、個別のEQで同じことを何度もせずに、作業の短縮の意味もあります。
BusへのEQに関しては、また後ほど書けたら良いな、と思います。最近良い動画を見たので。
9.必要がある時は、思い切ったEQingを
これも結構昔から根強く存在している意見です。「3db以上のブーストやカットは避けろ。」「ブーストを極端にやるな。」こういう意見は、普通に結構私も聞いたことあります。これは別に気にしなくていい、という話です。
ただ、Busではそんな極端な事するな、とも言っています。Busやったら1~2DB位が基準やで、との事。
これも、その必要があったらやったら良いんや。スネアとか高音10DB足したかったら足して良いやんけ。音が良くなるなら。との事でした。
10.全部にHigh Pass使うな
これも良くある意見です。とりあえずHigh Passぶち込んどけ、という人は結構いると思いますが、普通に考えて、Low Endはとても大事です、特に私がやってるようなエレクトロは、もうLow End大好きな人達ばかりです。
確かにLow Passは、音が団子になるのを避けるために必ず必要ですが、やりすぎると音がスカスカになります。
ここも目的の話になります。Low Endにノイズがある、KickのLowを少しタイトにしたい、そういう目的を持ってHigh Passを使いましょう、という話でした。前述しましたが、緩やかなHigh PassやLow Passも活用すると良いかと思います。
11.プラグインにお金と時間を使うな
実に耳が痛い話です。でも、最近になって私もそう思います。プラグインの多くは時間と金の無駄です。プラグイン買う前に、DAWのマニュアルを読んで、本を読んで、様々な情報を集めるべきと今になって思います。プラグインはお金がかかりますし、選ぶのにも時間がかかります。さらにプラグインを使うための勉強も必要です。プラグインを使いこなすのは時間がかかります。そして最後に、どのプラグインを使うのか考えないといけません。
プラグインを買うことが悪いのではありません。ただ、順番が有るはずです。いきなりプラグインで解決、というのはどうなんでしょう。先にMixを勉強してからプラグインを買うべきだ、と最近よく思います。特に序文でも書きましたが、サンプルを沢山使うAbleton Liveユーザーは、そもそもサンプルという完成した音を使っています。本当にそんな沢山のエフェクトが必要なのでしょうか。空気感とか真空管の感じとかよく言いますが、普通にAbleton LiveデフォルトのAmpとかSaturation突っ込んだら解決するのが殆どです。
Mixを勉強するのも、その1で紹介したブログもありますし、Youtubeで飛澤正人氏の動画を見るだけで大体オッケーと私は思ってます。プロの人達が、普通に動画や記事でノウハウを紹介してくれている時代です。記事や動画の作者のプロフィールや作品も調べて、勉強できます。プラグインを買うのはその後で、動画では、1つか2つのプラグインの使い方に精通するのが良かろう、との事でした。まぁ、もちろんプロは別とは思います。
12.バイパスボタン使いまくれ
これは当然のようで、結構やってない事があるのではないでしょうか。そもそも比較は、元々のもの、目標とするもの、今目標に近づけて作業しているものの3つで行うものです。元々のものも、大事なリファレンスです。
動画では、瞬きのようにバイパスボタンのオンオフを繰り返す、という手法も紹介していました。
また、この際極端なカットやブーストをした場合、ちゃんとボリュームがオリジナルと同じくらいになるように調整することも重要です。人間は音が大きいものを良いものと考えがちです。
13.プラグインの順番気にしすぎ
代表的なのはEQとコンプの順番でしょうか。動画では、プラグインの順番はそこまで重要ではない、とハッキリ言っています。
EQが先か、コンプが先か、というのは、色々話がありますが、それはコンテクスト、つまり状況による、答えはない、との事です。明らかに不要な音がある場合はEQが先、位で良いのかな、と個人的には思っています。
どの周波数がどういう働きをしているのかを知るのはとても重要です。以前iZotopeのMixing Guideの訳に、その辺りを書いていましたの、載せておきます。
- Low End (125 Hz以下)
Sub bassやBass、そしてKickが主役となる帯域である。この帯域の音は聞こえると言うより、感じるという程度のものである。
- Low-Mids (125 Hz – 500 Hz)
一般的に低音の基礎となる帯域で、この帯域が混雑すると、いわゆる音が団子になるという現象が起きる。Muddyと呼ばれる部分は大体この辺り。
- Mid-Range (500 Hz – 2 kHz)
ほとんど全ての楽器はこの帯域の成分を持つ。Mixでは、この帯域の楽器を、適切に処理するために、多くの時間を使うことが必要となる。
- High-Mids (2k Hz – 8 kHz)
この帯域では、Vocalのブレス、シンバル音、スナップ音系のパーカッション、Kickのハーモニクス、アコースティックギターをピックで弾く音などの成分が多い。
- High End (8 kHz以上)
いわゆる空気感や、Vocalの歯擦音が入る帯域である。この待機が強すぎると耳が疲れ、この帯域が弱すぎると、抜けのない鈍い雰囲気のMixになる。
どこをカットして、どこをブーストしているのか、目的通りの場所にあたりを付けれるようになりましょう、との事でした。
15.耳を鍛えましょう
そんなんどうしろっちゅうねん、って話ですが、EQを学ぶのに一番いい方法がこれだそうです。どこが問題か分かる耳を持たなければならない、という事です。周波数の勉強と似ていますね。
このサイトで訓練できるで、との事。
www.soundgym.co
またこのアプリも紹介していました。
apps.apple.com
普通に曲作りまくってEQしまくるほうが良い気もしますが、こういうのもあるんだそうです。
実に6千字近い文章です。何かここまで読んでもらってありがとうございます。大したこと無い内容で恐縮です。とりあえず、やってはいけないシリーズはこれで一段落として、またちょっと違った内容を次は書きたいと思います。
本当に長い時間読んでもらってありがとうございました!