Sound Lab Kichizyo

Ableton Liveのアレコレ

Ableton Live 11の新機能をぼちぼち触ってみる

とりあえず使ってみる

基本的に、出たばっかりのソフトをこんな風に速攻でインストールして使う、という事は良くないのですが、Abletonのブログ書いてるんだし、こういう素人で一般ユーザーのブログは人柱となるのが一つの意義と思い、人柱レビューしてみます。

 

ちなみに、有能プログラマーの友人から、「多分大丈夫だろうけど、普通はこういうのは数ヶ月でも待って、色々落ち着いてから使わないと、環境によっては致命的なバグとかで取り返しつかなくなる事もあるよ。」と言われた事も明記しておきます。

 

令和三年二月二十四日現在のレビューです。また、当方Windowsマシンです。

それと、使いながら書いてるので、文章にも内容にも至らぬ点が多々あると思いますが、申し訳ないです。

 

新しいエフェクトやインストゥルメント

これはもう公式見たほうが絶対早いです。Hybrid Reverb、Spectral Resonator、Spectral Time、PitchLoop89、Inspired by Nature等々。Drum Synthとかもちょっと変わったのが入ってました。この辺は公式見て使うしかないので。

ただ、そのうちボチボチと扱ってメモ代わりに内容を書いていきたいと思います。

 

インストール

基本的に全く普通通りです。問題なし。

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ただ、ダウンロードした.zipがいつも使ってるLhaplusで何故か解凍出来ませんでしたので、デフォルトで解凍しました。

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オーサライズも普通です。何も問題有りません。

立ち上げたらPackをインストールしていきます。

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新しいPackは8個です。それと、最近私がこの辺見てなかったからなのか、アップデートも結構ありました。

PackはWindowsなら、ドキュメント内のPackフォルダに入っています。Ableton Live上で適当なPackを右クリックして、エクスプローラーに表示で見れます。数GあるPackも有りますので、結構時間かかります。

 

新機能

新機能の簡単な使い方を書いていきます。

コンピング

いきなり躓いたんですが、ヘルプでは、アームを有効にしたトラックに、自動的にテイクレーンなる、コンピング用のレーンが作成される、とありますが、録音しても自動的には出てきませんでした。

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ただ、赤丸の所見てもらえたら分かるのですが、ループ内での録音はどんどん更新されてる感じです。まぁ、別に大丈夫でしょう。トラックを右クリックして

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テイクレーンを表示です。もしくはCtrl+Alt+Uです。これはショートカット覚えたほうが良いですね。

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あとは公式の動画みたいに、簡単にドラッグ&ドロップで色々編集できます。これ便利です。

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今触ってて思ったのですが、これ色々な音を適当に録音しまくって、偶発的な音作りなんかにも活用できる、可能性が沢山ある新機能です。ちなみに、こういう感じで、

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テイクレーンの良い所を選択して、Enterを押すと、

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選択した所が、テイクレーンからメインのクリップにコピーして配置されます。さらにそこをCtrl+矢印で移動させると、テイクレーンのデータを消すこと無く、選択箇所の配置を変えれます。ちなみに、コンピングは複数トラックでも出来ます。

何か言葉にすると分かりにくいけど、良い所を選択してEnterと、配置変えしたい場所を選択してCtrl+矢印は便利、とだけ覚えたら問題なしと思います。

また、これに付随してではないですが、アレンジメントビューでの細かいサンプルやMidi編集も少々勝手が変わっています。これは触ったら違いが分かるし、特別大きな違いでは無いので書きません。個人的には改善ですが、意見が分かれる所かもしれません。

 

それと、ココ追記なのですが、「コンピング出来ねぇじゃねえか!」という方は、オートメーションをオフにして下さい。これです。

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MPE

すいません。持ってません。というか、Push2すら持ってなくて、Push1で作業しています。ただ、この流れでPush3が出るなら、きっとMPE対応になると思うので、Push3出たら買おうかな。

ちなみに、環境設定→Link Tempo MidiのタブをクリックしたらMPEも設定出来ます

 

テンポ追従

これも環境設定→Link Tempo Midiのタブをクリックしたら出てきます。

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赤丸クリックしたら、

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コヤツが出てきます。これを押した状態で、色々録音したら、

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テンポが録音したトラックに合わせて、自動的にオートメーションされていきます。生演奏のグルーヴとかノリを残しつつ、Midiやサンプルの編集も快適にって感じでしょうか。

 

ラックとマクロ

Instrument RackとAudio Effect Rackも変わっています。これは完全に改善ですね。まずはRandボタン。

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これ押したら、マクロの値がランダムに変わりました。あくまで値だけで、マクロの内容は変わりません。

それと、マクロのバリエーションを保存できるようになりました。これは個人的には嬉しいです。右側の凸の中に+が有るみたいなボタンを押すと、Macro Variationsが出てきます。こんな感じ。

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Newと書いているボタンを押したら、今のマクロの状態を、チェーンみたいな感じで複数保存できます。名前も変えれます。そして、

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この▷ボタンを押すと、保存した状態にマクロの設定が戻る、とそういう感じですね。なるほど。

それと、マクロが16個まで増やせます。ここを押します。

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そうすると、

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これ嬉しい人多いですよね。

 

Midi編集

これが一番変わってるかな。個人的には結構改善と思います。賛否両論ありそうですが。。。謎の機能も有ります。Midiを編集しようとして、クリップをクリックしますと。

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見慣れぬ感じに。でもこれそんな複雑じゃなくて、赤丸の所で、Note編集、Envelope編集、Expression編集、という三種類を個別に編集出来る、という機能です。ただ問題があって、まずはNote編集。

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一番下の▶上を押しますと、VelocityとChanceという項目が出てきます。Velocityは良いんです。Chanceってなんやねん、って話です。これ試してみたのですが、Chanceが低いと、その音が再生されたりされなかったりする。音を発する確率を調整できる、という機能でした。これ個人的に結構謎なのですが、どうなのでしょう。

Envelopeは良いですね。別に変わっていません。こっちの記事に書いてある内容で対応できます。

Ableton Liveでのサンプル編集 Clip Viewを使いこなす - Sound Lab Kichizyo

Expressionですが、これも問題なさそうです。MPE的な動作とかはココに出るのかと勝手に思っていますが、MPE持ってないので、違ったらすいません。ただ、SlidesとかPressureとかありますので、その辺りの調整部分と思います。

微妙に分かりにくいのはR.Velocityでしょうか。これはRelease Velocityです。MIDIで一番良くわからん機能の一つですね。鍵盤が離される時、演奏する人がどれだけの速さで鍵盤を離したかを測定した値だそうです。Release Velocityは搭載されてないインストゥルメントや、エフェクトが結構あります。AbletonはこのRelease Velocityを使用する傾向がありますね。Samplerのチュートリアルの記事で書いた、Note Off Velocityと同じっぽいです。ここに書いてます。

Samplerチュートリアル その4 - Sound Lab Kichizyo

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SlideとかPressureとかありますので、そういうのの調整です。あと便利なのはこれ。

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スケールを視覚的に見れます。これ今までなんで無かったんでしょうね。

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赤丸部分を押すことで、Midi編集の表示が変わります。

 

トラックの複数編集

これも変わっています。これは正直触ったら分かります。

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強いて言うなら、赤丸のFocusを押すと、指定したトラックのノートのみを触れる、という位です。上記の通り、Scaleボタンと組み合わせると、また違った編集方法が出来ます。

 

ブラウザ

左側のブラウザも変わっています。

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グルーヴとかテンプレートとか増えています。でも、これも普通に見たら分かります。インストゥルメントの中とかも変わっていますが、見たら分かります。音が大分増えてきたので、より大きなカテゴリから細分化して音を探す方式になってます。こういう検索分野ってホント最適解が無くて難しいですよね。

それと、Audio Effect Rackは、オーディオエフェクト内、Utilitiesの中にあります。こういう感じで、結構初期位置が変わっていますので、よく使うものがどこにあるか、ちゃんと把握したほうが良いかと思われます。

 

センションビュー

これも変わっています。分かりやすい所ですと、マスターを左にドラッグしますと、

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こんなのが出てきます。これは赤丸内の数字、シーンと呼ばれる部分ですが、これをクリックしますと分かります。こんな感じで、シーンごとにFollow Actionとかも変えれます。

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この辺はLiveの演奏性が上がる機能ですね。ライブをしない人たちには特に関係ないとは思いますが、この機能が欲しかった人も多いでしょう。Follow Actionとかは、以前からある機能と同じなので、説明は省きます。

 

大体ザッとですが、大きな変化はこれ位だと思います。あとは細かい所になりそうですので、追々使ってみて、気になる所があったらまた書いていきます。

 

バグ見てみる

とりあえず、今まで作った曲が、色々な機能やプラグインを使っていますので、Live 10で完成した曲をLive 11で読み込ませてみました。ドキドキ、、、

 

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ありがとうございました。

 

まぁ、この程度は想定内です。全然焦ってません。こんなんその内アップデートで対応されるし。全然大したこと無いし。っていうか、普通に10で読み込ませたら関係なくない?って感じです。別に10で作ってる曲は10で終わらせるのが道理。11でいきなり何かやるとかおかしいですよ。そんなん。おかしいのは私の頭です。

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ほうら、10なら立ち上がるんだから問題ないっすわ。ただ、他の曲もいくつか立ち上げましたが、普通に立ち上がる曲もありました。何か原因があるんでしょうが、とても高い確率でVSTとの兼ね合いだと思います。大体そのパターンが多いです。VSTはバグの温床です。

どんどん使ってみて、「あ、これしたら動かんわ」とかもあると思いますが、基本的に簡単に触った感じでは、VSTとかも問題なく使えたんですよね。その内色々分かってくるでしょう。

 

最後に、今回Live 11で読み込めなかった曲を載せさせて下さい。お耳汚し失礼します。また何か触ってて、面白い機能あったら書いていきます。

以上、ありがとうございました!

soundcloud.com

 

EQについて真面目に取り組んでみる その5~MS EQその2~

実際MS EQはどんな使われ方をしているのか

前回の記事で、MS EQに関して、前知識というか、基本的な所を参照記事や動画から書き出してみました。実際どうやって扱うかに焦点を当てたこの記事よりも、むしろ前回の記事の方が重要な事を書いていると思います。前回の記事はこれです。

kichizyo.hatenablog.jp

今回は、その参照記事や動画で、実際にMS EQがどう使われていたかを纏めたいと思います。

これはiZotopeの動画で取り上げられていたのですが、MS EQの使用の一つの基準として、主にセンターの音に何か問題があって改善したい時、またMixと音作りは良いけれど、ステレオに狭さを感じる時などにMSの使用を考える、という話が有りました(もちろんそれだけがMS使用の理由ではありませんが)。この様に、ステレオやモノでの問題点や不満足に感じる部分を発見した時に、具体的にMS EQをどう使うか、が以下になります。

幾つかのジャンルに分けて、纏めていきます。

 

マスターバス

MS EQを使用する場合で、使用頻度が高いものの一つがマスターバスだと言われています。Mixがある程度完成した時に、Monoで全体を聞いてみると何かがおかしい、と感じることがあります。ステレオで聴く場合とモノラルで聴く場合で、バランスが若干変化するのは当たり前の事ですが、この変化を最小限に抑え、最終的には素晴らしいサウンドが得られる音場の作り方が目標である、と述べられています。
その1でも書きましたが、音楽を聞く環境は様々です。クラブ、レストランのスピーカー、車、様々な環境でどう音が上手く聞こえるかは、この音場の作成がとても重要です。

この際、ステレオ幅の調整に関しては次に書きますが、ステレオイメジャーを使い、Midを広げたり、トップエンドを広げたり、それも一つの解決策ですが、ここでMSを使うのも一つの手法です。MSの使い方で最も一般的と言える、マスターで、SideのLow Endを削り、Top Endの音を上げる、また、MidのLow Endの調整、という物がそれです。

例えば、その1では参照に載せていませんでしたが、こちらの動画。

www.youtube.com

マスタリングエンジニアのSub Bass処理として、上記のLow End処理を使い、強すぎるSub Bassを、MS EQとDynamic EQの併用でスッキリとしたものに仕上げています。

また、その1で紹介した、同じくStreaky氏の動画のこの部分。

youtu.be

ここではまさに、上記のSidesの処理が行われています。

私の作業途中の曲の処理で恐縮ですが、Sub Bassの強い曲だったので、Streaky氏の動画を参考にして、MS EQをマスターで使用しました。かなり強烈な使い方ですが、Audio Effect Rack内のチェーンの中の音です。

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この処理をして、目標のバランスがこんな感じで、低音がある程度整いましたが、

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このEQを切ると、

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こういう感じで、聞いたらすぐ分かるくらい低音が極端になります。実際ステレオ幅も、低音を削ることで広がっている様に感じるのが分かります。

 

低域がステレオのフィールドに広がってしまうと、 ミックスを圧迫してしまいがちです。MS EQでの低音処理は、上記の様に、Sidesの低音をカットすることで、濁りを取り除き、低音を中央に寄せることができます。

一般的な使い方は上記の通りですが、他に具体的に述べられていた例として、

例えば、ステレオで聞いた時はローエンドはクリーンでクリアなのに、モノで聞いた時は少しぼやけている時、あるいは左右がハッキリしすぎていて、ステレオの情報が過剰な時にMS EQを使うと効果的な事がある。

あるいは、ステレオで聴いているときに、Midの音をもう少し目立たせて、Sidesを抑えたい時に、Midのみをブーストすることで、バランスを歪ませることなく、これを実現出来る場合がある。

 という言及も有りました。

 

ステレオ幅の調整

ステレオ幅の調整に関して、まずStereo ImagerとかStereo Image Enhancerとか呼ばれるものが候補に挙がりますが、iZotopeの記事ではStereo感を高めるために、このStereo Imagerを使うのは良いのだけれど、Stereo Imagerは効果が大きいため、あくまで少しだけ使う、というのが原則だそうです。前の記事で書きましたが、圧縮されすぎたミックスや広がりすぎたミックスは、特にラウドスピーカーやHi-Fi、モニター、車のスピーカーなどで、耳の疲れに似た感覚を引き起こす可能性があります。

その為、微妙なステレオ感の調整にはMS EQが良い、と言われています。

その為の知識として、EQ をブーストした際、サイドのステレオの広がりを最も顕著に感じ取れるのは、サイドの中域をブーストした時という事を知っておくと良いとの事。私たちの耳は、中音域の空間的な違いにとても敏感に反応します。その為サイドの中低域をブーストすることは、空間を広げるのに非常に効果的なのだそうです。

具体的な使用方法は上記の通り簡単です。Sides、特に中域を持ち上げたり、Midの低域を下げることで、Sidesのステレオ幅が広がる様に感じます。これはその目的やMixによって考え方が違うので、一概に言えませんが、ステレオ幅を繊細に広げる為に、MS EQは大きな役目を果たす事が出来る、ということを知っておくことが重要です。

しかし、注意しなければならないのは、当然の事ですが、それが出来るからといって、それをすべきとは限らない、という所です。MS処理の影響は、前回の記事で書いた通り、使い方を間違えるとMixを壊します。重要なことは、なぜ音場を広げたいのか、という所です。ステレオ幅を狭めた方が良い場合もあるし、オートメーションやDynamic EQを使用して、ある部分では広くして、ある部分では狭くする、等の工夫も考えておくべきです。

 

楽器間の周波数帯の調整

EQなので当たり前ですが、これもメインの使い方です。幾つかの記事では、Mixの明瞭度を高める目的での使用が述べられています。MidとSidesを別々に、細かくEQingして、対立している要素を修正します。

具体的には、

 

1.ギターとボーカル

今回はギターとボーカルを例に出しましたが、他の楽器でも考え方は同じです。例えばギターとボーカルが同じ基本周波数帯を共有しているためにぶつかる事があります。

ギターの基本周波数を下げることもできますが、それではギターにパンチが無くなります。ここでMS EQを使い、ギターのMidの基礎周波数を下げ、Sidesの基礎周波数を維持することができます。こうすると、ボーカルがギターを傷つけることなく明瞭度を上げることが出来ます。

ここでは述べられていませんが、Dynamic EQも同じ様な使い方がありますので、併用するのも実に良い手法と、記事を書きながら私は思いました。

Dynamic EQに関してはこちらです。

kichizyo.hatenablog.jp

 

2.Sidesに置かれているバックグラウンドボーカルの処理

マスターでの処理としても良いですが、例えばサビの時、MixのSides部分に重ねている、バックグラウンドボーカルをもっと出したいと思うことがあるかもしれません。この時にもMS処理でとてもスッキリとした結果を得ることが出来ます。

ボーカルの周波数帯域を特定し(今回は記事に習って500Hzから2.5kHzの間とします)、Sidesにボーカルが入ってきた時(例ではサビの部分)に、Sidesのボーカルの主な周波数を少しだけ、広い範囲でブーストするようにオートメーションをかけます。この時、最大でも 1.5 dB を超えないようにします。少しのブーストで、ボーカルの意識を高めることができます。

 

3.シンセやギターのバランス作成

Wavesの動画で言及されていました。これはシンプルかつ基本的な使用方法で、Midの低音を下げ、Sidesの高音を上げる、という所。

ちなみにWavesの動画では、Scheps 73を使っていましたが、結構8dbとかまでガッツリ上げてて、中々やりよるな、と思いました。一応例として数字も書きましたが、普通のEQでも8dbブーストって中々勇気がいる所と思います。

また、シンセに関して、

特にEDMでは、多くの明るい要素が一緒に演奏されていることは珍しいことではありません。
非常に耳につく、例えばホワイトノイズのようなTop Endは、その音単体ではとても良いと思える事が多いですが、他の明るいサウンドと組み合わせると、全体的にあまり良いサウンドにはならないという事があります。

そういう時は、私は自分が最も魅力的だと思うシンセのTop Endを選び、他のトラックで重なっているTop EndをFilteringする事があります(10K以上など)。
しかし、その他Hi Hatやクラッシュ、明るいスネアなどを使っていると、高音が混雑したように聞こえる事もあるので、優先順位を付けることは重要です。

 みたいな事が書いていました。さらに、一つの手法としてですが、

さて、これは少し意見が分かれるところですが、MS処理にダッキングを加える事で、Top Endをクリアかつオープンにするという方法があります(書いてて思いましたが、MS Compだけでなく、MS Dynamic EQもそうですね)。
Hatとクラッシュをセンターに配置し、高音がおいしいシンセのTop Endを、Midのみでトリガーして、Hatやクラッシュをダッキングさせます。
これにより、シンセのトップエンドは保持されますが、ハットとクラッシュのためのレーンが確保されます。

このような極端な事はさておきですが、サイドのシンセの音で中音域を少し下げることで、音が非常に広がりを持って聞こえるようになることがあります。

 という手法も書かれています。

 

4.ドラムのオーバーヘッド

ドラムキット全体の音のオーバーヘッドですが、クラッシュ、ハット、ライドだけでなく、スネア、キック、タム等、全てのコンポーネントを使用しているので、クローズマイクだけでは不可能なバランスを操作したいと思う事は、私はドラム録音とか一回しかしたこと無いですし、ドラムのオーバーヘッドマイクを触る、というのはあまりありませんが、普通のドラムループのサンプルを使う際でも同じことが言えると思います。

MS処理を使って、オーバーヘッドのバランスを調整する事も述べられています。例えば、MS処理を使って、シンバルを維持しながらオーバーヘッドのスネアレベルを下げるのは、Compの使用も勿論良いのですが、スネアは中心に位置する事を考えたら、MS処理が使えるのは確かです。
オーバーヘッドのキックとスネアのLow Endを維持しながら、サイドのLow End情報だけをMSで減衰させたり、MidのLow Endのみをブーストしたり、あるいはその両方を行うことで、全体的なミックスの中で望ましいLow Endを作り込めます。最終的には、ここには多くの手法や可能性、理想があり、何を求めるかにもよりますが、スタイル的に完璧なドラムサウンドを得るためには、MSは一つの有効な手段となる。という事でした。

ただ、こちらもこの様に書かれています。

MS テクニックでドラムバスの幅を大きくしたくなるかもしれませんが、そうするとキットのリアルさが損なわれてしまうかもしれません。
ドラムのバランスを適切にとるためには、個々の要素の間の位相関係を正確に調整し、空間を明確に区切るようにします。

が注意点だそうです。

 

5.MS処理でボーカルの音を目立たせる

センターの重要な音を際立たせる際にもMSが使えます。例えばボーカル。もちろん声によりますが、センターで所謂ボーカルの良い音を持ち上げ、存在感を上げます。

また、MSでディエッサー的な事を行う事も説明されていました。マルチバンドコンプでディエッサーの様な事をする場合がありますが、それをMidのみの、よりピンポイントで行う、という感じでしょうか。

MSを使うことで、例えば広がっているリバーブの反響音等に影響すること無く、真ん中の音だけ強調できるという特性があります。ステレオイメージを壊さずに処理を行えるため、ボーカルだけでなく、他の楽器でも使えます。例えば動画では、MSコンプで行っていましたが、Midのタンバリンの音を抑えて、ボーカルとの被りを消す。という手法がありました。

 

6.Low Endの調整

EDMで使われる手法ですが、キックと他の要素の間に従来のサイドチェインのダッキングに加えて、MSを使った特殊ダッキングを作ることができます。

これは、音場の広い楽器のSidesのみに、キックをトリガーとしてダッキングを行う処理です。これにより、楽器の音量だけでなく、ステレオフィールドが伸びるような効果が生まれます。
この手法は、ダイナミクスに新しい効果を加えることで、ポンピング感を大きく高めます。ただ、これは非常に特殊な使用方法であり、必ずしも適切な効果があるとは限りません。

これ正直使いみちが特殊すぎて、パッとどうなるか思い浮かばないのですが、とりあえず書いてあったので、メモとして残しておきます。

 

7.サンプルの操作

ヒップホップや様々なスタイルのエレクトロニック・ミュージックでは、サンプルをミックスすることがよくあります。

この場合の難しさは、サンプルの音は作り込まれた物が多いですが、それらを実際に使う為に、他の要素とのバランスを取る必要があります。よってEQを工夫しなければならない事があります。
例えば、レコードの左側にある特定のギターの音を強調しながら、スネアの音を出さないようにしたり、ハイハットの音を出さずにサンプルを明るくしたりすることもあります。

M/S処理は、より具体的に何を達成しようとしているのかを明確にしたら、良いサンプル編集の手助けとなります。

 

8.ダイナミックコントロール

これは記事にあったので書いていますが、MS EQじゃなくてMS Compの内容でした。ちょっと話ズレるので、凄くざっくりだけ書きます。

一例として書かれていたのは、ステレオギターのトラックやバスにMS Compを使用する方法でした。Glue Compをトランジェントには影響しないような感じでMidにかけて、Gainを上げ、ちょっとルーズな感じに。またはそれをSidesにかけると、全体が中央に吸い込まれるような、タイトな感じになる、という例が書いていましたが、何かざっくり過ぎて意味不明ですいません。ですが、EQでもCompでも、前の記事で書いた、MSの注意点みたいなものは変わりません。その辺りを考えて、Compも使いましょう、という感じでした。

ただ、MS Compは、適当に使ってると、個々のトラックに使ってるCompと競合して、意味不明な現象を起こすことが多々あるそうなので、あくまで軽く使うべき、というのは、前の記事で書いたとおりです。

 

オートメーションでの使い方

MS処理を使う最もシンプルな方法の一つがボリュームオートメーションです。どんな種類のMS処理のプラグインを使っても、サウンドのMidとSidesを別の形でオートメーションがかけれる、というのは一つの強みです。

この方法でよく使われるのは、目立たせたい箇所で、ドラムのオーバーヘッドやギターのサイドのボリュームを上げる事が言われています。これにより、ミックスに微妙ではありますが、効果的なエネルギーを与えることができます。

あるいは、静かに聴かせたい時に、ボーカルのSidesを少し下げて、より音に密接感が出るという手法、またはその逆に関しても書かれていました。

しかしながら、この手法は全体的なボリュームバランスに注意が必要になります。Mixの全体的なボリュームレベルを壊さないように注意しないといけません。

 

 

大体以上で内容はまとまった気がします。メモ書きみたいな感じのくせに長文ですいません!ただ、どの記事でも書かれている事ですが、MSでステレオを調整するよりも、楽器の重要性を理解して、適切なPan設定をする事が、まず第一である、という事も、注意点として書いておきます。

 

一応これで、EQシリーズを簡単ですが終わります!ちょっと長い、素人のメモ書きですが、もし取り入れれる部分がありましたら嬉しく思います!

 

以上ありがとうございました!

EQについて真面目に取り組んでみる その4~MS EQその1~

様々な方面からのEQの話

やってはいけないの2つの記事と、Dynamic EQの記事と続いて、今回はMS EQです。このMS EQですが、正直あまり使っていなかったのですが、しっかり使えたらカッコいいなぁと思って調べてみました。

一応今回のMS EQで、EQについて真面目に考えるシリーズは一旦切りとします。やってはいけない、という観点から、EQで避けるべきことや考え方なんかを取り上げた後、特徴的なEQの2つ。Dynamic EQとMS EQについて記事を書きます。何度も書いておりますが、当方素人でございます。何卒、あまり参考にしすぎない事をオススメします。殆ど自分用のメモ書きみたいな所がありますので。それと、MSコンプに関しては書いていませんが、当然ある程度内容が通じる所もあります。

 

念の為書いておきますが、Ableton LiveのEQ EightでもMS EQが出来ます。画像赤丸の部分でモードを変えます。

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参考にした記事や動画は以下です。誰が書いているか分からない記事や、どこの会社か分からない記事は避けています。

記事

5 Ways to Use Mid-Side Processing in a Mix — Pro Audio Files

Akonのプロデューサーの方が書いた記事です。この記事には動画も紹介されていますが、それも参考にしています。

Mid-Side Mixing: Pro Tips for a Crystal Clear Mix

有名なYoutubeのチャンネル、Musician on a Missionの記事です。書いている方は、Game音楽や、映画音楽なんかを作っている方らしく、そんな有名な人のプロデュースとかではないですが、シンプルに纏まっている記事で、この方の曲も可愛らしくて素敵です。

8 Common Mistakes in Mid/Side Mixing

天下のiZotope様の記事です。

 

動画

www.youtube.com

次はiZotopeと人気を二分していると、昔はよく言われてた、Waves様の動画です。iZotopeとかWavesとか、EQ作ってる側の動画は、やっぱり意図した使い方を紹介すると思ったので、その辺の動画を参考にしています。

 

www.youtube.com

iZotopeの動画です。iZotopeWavesは、販促の意味もあって、この手のTutorial動画とても多いですね。このiZotopeの動画は、よりマスタリング的な内容です。MS EQの話では、マスタリングの話はとても良く出てくるな、と思います。

 

www.youtube.com

最後は、最近よく見るStreaky氏の動画。知らなかったのですが、この方メチャクチャ有名なミュージシャンと一緒に仕事をしているようです。Linkedinによるとですが。

Skepta, Paul Weller, Naughty Boy, JME, Giggs, Boy Better Know, Lily Allen, P Diddy, Usher, Wiley, Depeche Mode, Kasabian, White Strips, and Chip are just a handful of the artists to benefit from Streaky’s expertise as a Mastering Engineer.

この方の動画は、面白いのが多いので、また違う内容もまとめて翻訳記事書きたいと思います。

 

沢山参照が有りますので、MS EQに関しては、二つの記事になりそうです。今回は、実際に使う方法の前段階の知識をまとめます。

 

MS EQってあんまり必要ない?

それを言っちゃあおしまいよ、って感じですが、実際これ私が今回色々調べて感じた事でした。というか、今まで良くわかってないくせにMS EQを使いすぎてた。というのがバッチリ明らかになりました。PCに詳しい友人が分からないなら使うな!とよく言っていましたが、本当の事ですね。

MS EQを下手に使うとMixが崩れるとiZotopeの記事では言っていますが、その原因の一つとして、位相が変わる事が述べられています。とりあえずやってみます。

先ずは、適当なドラムトラックを読み込ませて、UtilityをM/Sモードに。だんだんSideを上げていって、位相がどうなるか見てみます。Utilityで位相を変える方法はこちらです。

kichizyo.hatenablog.jp

これが元の位相です。

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UtilityでSideを上げてみました。完全に上げ切るとこのアナライザーでは分かりにくくなるので、とりあえずコレくらい。

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そうするとこうなります。

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もっと極端な場面もありましたが、とりあえずの例です。こんな感じで、位相がズレますので、Mixに与える影響は大きくなる、との事。iZotopeの記事ではこんな事が書いていました。

私たちが「Mid」と呼んでいるものは、実際には左右のチャンネルの合計です。
これは結局、左右で同じものが強調され、違うものが強調されないことになります。(Midを上げると、左右のチャンネルの同じMid成分が強調され、Sideは強調されない、という意味と思われます)Midを上げると、左右のチャンネルで同じようなものが強調されるため、結果としてモノラルとして認識されます。
「Sides」も同じくMono成分です。が、これは左側の情報から右側の情報を差し引いたもので構成されています。つまり、Sideを上げると左側+位相反転された右側が強調される事になります。

MS処理は、センターとサイドを完全に分離している訳ではありません。常にオーバーラップがあります。このオーバーラップがMixにどのように現れるかを理解していないと、大きな悪影響をMixに与える事になります。

もっと数式的なものとか色々有りましたが、もの凄くざっくり言うと、Midを上げるとMonoになっていき、Sideをあげると、位相が反転した音が上がっていき、音が大きく変わってくる。そして、音を完全に左右に分離した処理ではないので、音がタブッてる所が出る。という感じです。

例えば極端に左側にPan設定したオーディオも、MS処理すると、実際にはMidとSides、両方に影響があるから、楽器の明瞭度が無くなったり、空間的に歪んだ変なエフェクトが発生したりする、という事が例で挙げられています。

結局、何でもそうだとは思いますが、極端な使用は避けるのがMS処理の基本と言っても良さそうです。

 

その他の注意点

一番注意しないと行けない所は、MS EQはMixにかなり大きな影響を与えるということです。さらに上記の位相の問題が有るため、真上に書いた通り、極端な使い方をしてはならない、という所が多くの記事でも述べられていた所でした。特に多く言及されている、マスタリングでの使用は、軽めに使って、極端な使用は絶対に避けるように、というのがマスタリング専門家のStreaky氏の言でした。Steaky氏はマスタリングでは、7db以上上げることはほぼ無い、実際は7dbよりももっと下。1dbとか2dbとかの方が多い、とまで言っていました。

特にMS処理では、音を大きく広げたい、という目的から、Sidesの処理をやりすぎる傾向がある、と幾つかの動画や記事で述べられています。これも結局、当初意図したバランスから崩れるような、極端な使い方をしてはならない、という所に繋がっています。ここも面白い例えが書いていて、

これは、写真を撮ってPhotoshopに入れ、背景の要素を前景の要素と同じようにクリアにする為、様々なエフェクトを使っているのと同じことです。
最初は良いと思えるかもしれませんが、しばらく見ていると、全てが前面に押し出されていて、強調されすぎているように感じ、全体がズレているように感じます。
ソニックの世界では、Sチャンネルを強調しすぎるとこのようなことが起こります。

という話が有りました。

また、実際の様々なリスニング環境を考えることが重要、というのは、iZotopeの動画で述べられていました。

例えば、車で音楽を聞く時は、運転席で音楽を聞くと、片方のスピーカーが遠くにあります。この車で音を聞く、という所について、iZotopeの記事ではこの様に述べられています。

過度なCompがかかった音と、極端に音場が広げられたMixは、特に大きな音を出すスピーカー、Hi-Fi音、モニタースピーカー、車のスピーカーで聞くと、似たような閉塞感や耳の疲れが発生することに気が付きました。

これに気付くには、ステレオバスに関して数年考えた後でしたが、一度この気づきを得ると、様々な事が上手くいくようになりました。
ミックスを車に持って行ったり、疲れていない状態の耳でモニターで聴いたりすると、過度なCompの特徴である閉塞感を感じる出来事がありました。その後メインバスのComp、Limitter、Multiband Compをチェックして何が起こっているのかを確認すると、酷い過度なコンプの特徴の割に、たった-0.5dBのゲインリダクションしかしていない事にとても驚きました。
音楽的な時定数が問題になっているのかとも思いました。Compを切ってみても閉塞感は消えません。何が起こっているのでしょうか?

全てのエフェクトや処理を調べてみた所、EQの中のMS処理をしている帯域にバイパスをかけると、過度なコンプの特徴の閉塞感が消えました。
そこで、同じように感じた事のある過去のMixでも、同じ現象が起きているのにも気づきました。

MS EQをやりすぎると、コンプレッションを煮詰めすぎたように感じるのはなぜでしょうか?
それは前述の、MS処理は単純にMidとSideを分けている訳ではないということ、位相の問題でトランジェントが消えている事、過度なMS処理で周波数のバランスが崩れてしまっている事が関係しているのではないかと思います。

ミックスを車に持ち込んで聴いてみて、その様な現象が起きて、何かしらの過度な処理に気づいた場合、MS処理によって音場が広くなりすぎている可能性があることを考えてみてください。

ここは結構重要なポイントだと思いました。

また、スマートフォンや、イヤホン、スピーカー等、実際に音楽を聞く時は様々なリスニング環境が考えられます。そうした時に、何がセンターになるか、というのはとても重要です。キックやスネア、ベース、ボーカル、重要な楽器が片方一方から聞こえて、一方からは小さい、という状況を作らないように、MS処理で問題となるMidに何が有るのかを、よく理解するように、との事でした。

ちなみに、EQ Eightでは、下画像のように

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M/Sモードにした後、右上ヘッドフォンボタンを押します。そしてMidかSidesを選択して、任意の場所をクリックすることで、MかSの、その周波数がどういう音なのか、ピンポイントで聞くことが出来ます。

 

人間の耳は、真ん中から聞こえてくるもの、また極端に左右から聞こえてくる音が目立つように出来ているそうです。

MS処理は完全に左右を分ける処理ではなく、Midは左右のチャンネルで、真ん中に配置した音の合計、というのは前述した通りです。

これはiZotopeの動画で、どれだけ音を大きくしたいかにMS処理が関係する、という内容で語られていましたが、左右のスピーカーから同じ音が出ている時は、当然その音は大きく聞こえます。殆ど片方からしか音が出ていない。また、左右別々のタイミングで音がなっている、という場合は、当然小さくなります。

Midは左右のチャンネルで、真ん中に配置した音の合計、という所から、音をなるべく大きく聞かせる、という目的にも、このMS処理が大きく関わってくる、という事も、考えて使うと良い、との事でした。

 

それともう一点。これは特にMS Compに関しての言及でしたが、EQでも同じことが言えます。例えばギターのトラックにEQやCompを使用して、そのバス・トラックにMS処理を使う、となると、EQやCompを二重でかけている。しかも2つ目のEQはMS処理という特殊なエフェクトである、という事を意識しないといけません。

同じ要素の音が、異なるCompやEQ処理を受けることになり、2 つのタイプが違う処理によって異なる方向に引っ張られたり、押されたりするような、意図した物と違うサウンドになってしまいます。
例えば、左右のチャンネルにギターを配置したロックミックスの場合、MS Compを適用してMidをSidesよりも圧縮すると、左に位置したギターが変な間隔でレベルが上がったり下がったりすることになり、ミックス全体のバランスが崩れてしまう可能性があります。

 

次回は、記事や動画で実際に取り上げられていた使用方法について調べてみます。以上ありがとうございました!

 

EQについて真面目に取り組んでみる その3~ダイナミックEQ~

今回もEQネタに関してですが、何度か書いている通り、私は素人です。あくまでこんな感じの情報を、こんな感じにまとめたんだねぇ、位の感じで読んでもらえると有り難いです!趣旨はこのシリーズの序文に書きました。特に内容は無いのですが、もしお時間ありましたら。

kichizyo.hatenablog.jp

 

Dynamic EQに関して

今回は、Dynamic EQに関しての記事です。

そもそも私はDynamic EQとMultiband Compの違いが全然分かっていませんでした。まぁ、今でも良く分かって無いんですが、、、

とりあえず、分からない私が色々書くより、Dynamic EQとMultiband Compの違いは、何度か引用致しています、soundevotee、Kojima氏の記事を参照にするのが一番と思います。

soundevotee.net

 

上記の記事を読んだ上で、ですが、結局使う際はDynamic EQとMultiband Compは大体同じもの。Dynamic EQの方が細かく設定できる。位の感覚でやっています。何しろEQはQ設定ができますし、周波数もピンポイントで指定できるので、色々細かいこと出来る、って感じで理解しています。というか、私ごときでは、それ以上はあんまり必要ない気もします、、、並列とか直列とかで、音がどれくらい違うかとか、私には分かりません!同じでヨシ!

 

 

で、実際Dynamic EQをどんな感じで使ってるのか、という所で、参考にした記事が以下の3つです。

 

https://sonicscoop.com/2018/03/15/dynamic-eq-tips-from-the-pros-what-it-is-and-how-4-top-mixers-use-it/

 

この記事では、実際に有名エンジニアがどういう感じでDynamic EQを使っているかを書いています。

 

www.izotope.com

 

こちらはiZotopeの記事です。なるべく有名所を引用しようという魂胆での参照です。私も含めてiZotopeの製品を持っている方は多いと思いましたので、iZotopeの記事を読んでみようと思いました。

 

www.waves.com

 

iZotopeと同じ理由でWavesの記事も読んでみました。私は持っていませんが、Wavesの製品もお持ちの方は多いと思います。

本当にEQ、というか、Mixは難しくて嫌になります。Mix EngineerとかMastering Engineerとか、どういう耳をしてるんじゃろうか。同じ耳のはずなのに。解せぬ。

 

3つの記事で、内容が重複している部分もありますので、その辺りはまとめて書きます。

 

なぜDynamic EQなのか

先ずはここを書いてから、実際にどんな使い方をするのか、に行きたいと思います。Dynamic EQは比較的新しいものです。Static EQとか、Global EQみたいな言葉が出てくるようになったのは最近だと思います。当然ですが使い方も様々。上記の記事の他にも、いくつかを参照したのですが、大体どの記事にも書いていた事を簡単にまとめると、

 

今までのEQは、全て静的なもので、動的なEQingが必要な場合で、Dynamic EQが活用される。例えばWavesの記事ではちょうど傘をさすようなもので、雨がやんだら傘はささなくなるし、小雨の時は傘を使わないかもしれないし、傘を使いたくない時もあるだろう、そういうものだ、という例えをしていました。

実際の使用例は後に書きますが、例えばVocalの不要な周波数を抑えるためのカットは、あるフレーズでは効果があり、次のフレーズでは余計なものだったりします。そういう時にDynamic EQが実に効果的だ、という事でした。静的な普通のEQでは、常に指定した周波数の制御が行われるため、「この場所では、この制御は必要ないからオートメーションで切っちゃえ」みたいな一手間を必要とする事が多々ありますが、Dynamic EQで、そういう手間が省けます。

殆どのトラックでは、時間の経過とともに周波数の内容が変化しますが、特定の場合に、他のトラックとの兼ね合いで問題が発生する場合に重宝する、という考え方で良さそうです。

これってMultiband Compでもそうじゃない?って感じですが、前述したとおり、大体似たような物と思われますので。

ただ、使い分けの方法というか、特徴として以下が述べられています。

 

Multiband Compressors vs. Dynamic EQs: Differences and Uses

Gainのみで音を制御するDynamic EQと違い、Multiband CompはRatioやAttack、Release等があるので、Multiband Compのほうがより音の変化が分かりやすい、Dynamic EQはより無味乾燥な音の変化である。

とは述べられています。ちなみに、Dynamic EQでも最近はRatioとかAttack & Releaseがついてるのとかあります。WavesのF6とか。

またWavesの記事では、

Dynamic EQとMultiband Compは、選択的に音の圧縮(Compress)と膨張(Expand)を行い、音の強弱と周波数をリンクさせて処理するという点で似ています。

しかし、Multiband Compがクロスオーバー・フィルターを使用して、かなり広い周波数領域に影響を与えるのに対し、ダイナミックEQでは、圧縮(Compress)や膨張(Expand)をしたい周波数を正確に指定することができます。

と書いていました。また、トランジェントに与える影響が、Multiband Compに比べて少ない、という言及も有りました。これはEQによるとは思いますが。それと、がっつり潰したい時とかも、Multiband Compの方が良いのは間違いないでしょう。

しかしながら、大体こういう使い分けで宜しいかと思います。

実際画像で見てみますと、Multiband Compは音を決まった形で圧縮しますが、Dynamic EQの場合、例えばFabfilterの製品とかみたいに、どの様なEQカーブで音を圧縮するかとかを決めれる製品もあります。例えばHigh PassとBellを組み合わせて、より自由な形で音を制御できたりします。まぁ、下の画像のような、こういうよく分からない事は、余程理由がないとしないほうが良いとは思いますが、、、それも状況次第なのでしょう。

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この辺を考えて、実際どんな事に使っているのか、記事の内容を整理して書いていきたいと思います。

 

実際の使用

記事を読んでみますと、ざっくりと大別すると、4つの事柄が出てきましたので、4つに分別して、それぞれ書いていきます。注意点みたいなものも述べられていたので、そこもボチボチと書いていきます。

ただ、重要なことは、局所的にどういう感じで使うかを単純に知るより、こういう動きをしているものだから、こういう風にも使える、という感じで、応用が効くようにする事が重要だそうです。何しろ、EQとMultiband Compの併用、と考えるだけでも、無数に手法はあります。ここに書くのは、プロの人達が実際に行っている一例だと捉えていただければと思います。

Vocal

私はあまりボーカルのある曲を作ったことが無いのですが、ボーカルに関しての言及はとても多かったです。

最もダイナミクスや、音程の変化が大きくなるトラックの一つがVocalなのは間違いないと思いますので、そこに使うのは、ある意味分かりやすい使い方と言えますが、具体的には、

 

1.例えば静かに歌う場所では、EQが作動せず、存在感を維持しつつ、サビ等で大きく歌い初めた時は、EQが動いて、極端な荒々しさを抑える手法。


2.高くて大きな声で歌っている時は良くても、ソフトに低い音域で歌っている時は、マイクに近いことも相まって、濁った周波数が強調される傾向がある。そういった時のVocalのLow-Midレンジ、具体的には150~350前後の調整。Multiband Compよりもクリアな結果が欲しい場合は特にDynamic EQが良い。


3.ボーカルによって、大きな声で歌うと細くて硬い音になったり、低い音やマイクの近くで歌うと、音が太くなったりする。その調整。(2と同じですね)
ボーカルの強弱が大きな場合、ダイナミックEQを使って、問題の周波数でThresholdを設定し、音量を調整し、ボーカルがより一貫した音量にとどまるようにする。
逆に、静かに歌っている時には不要な周波数をカットしたり、ハードに歌っている時にはローエンドを補ったりする。


4.例えば、ギターとリードボーカルが同じスペースを占有している場合(これはギターだけでなく、その他の楽器でも)、ボーカルが無い時にギターの音が小さくならないようにDynamic EQを使う。ボーカルトラックをギタートラックのバスに差したDynamic EQのサイドチェインに設定し、ギタートーンを必要なときだけダッキングさせる。ボーカルによるが、ギターの中低音部は特に音がMuddyになるため、数dbのカットを試すのは一つの手。


5.細かく微妙なDeEsserとしての調整。

 

という記述が有りました。確かに、Dynamic EQを使う理由が見て取れる、流石の使用例だと思われます。

iZotopeのNectarは、結構特殊なので、動画を見て調べるのが良かろうと思います。

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ついでですが、Nectarの目玉に、画像赤丸内のFreqをクリックすることで、Vocalの好ましくない反響音を、動的に削る、という機能があります。

Drums

当然なのですが、こちらも複数のトラックの関係性を考えての使用となります。具体的な使用例として、以下が述べられていました。

 

1.ドラムのSub mixのスネアが、

Sub mixに関してはこちらがリンクです。英語なのでざっくり書いてしまいますと、マルチバステクニックです。最終的なステレオマスターの前に、すべてのトラックを任意のSub mixトラック、例えばDrums、 Music、 Vocals、Effectsなどの大カテゴリに分別して、そこで様々な処理を行う方法で、その大カテゴリがSub mixという事のようです。

ハイハットの低音域とぶつかっている時、スネアのヒットをDynamic EQのSide Chainにして、スネアの音が鳴るときだけ、ハイハットの低域を削る。このロジックはどのDrum音にも言えることである。


2.ドラマーが、クラッシュシンバルを強く叩きすぎているときだけ抑え込む。小さく叩いている時はそのまま。


3.特定の状況下のみで鳴る、不要な反響音を削る。例えばスネアやタムの反響音や不要な低音。特に問題の周波数が、他の楽器の周波数とかぶっている時にDynamic EQは使える。


4.軽く削る程度のBand Passを、複数使用して、ドラムのうるさい高音をコントロールする。例えば、空気感をそのままにして、高音のきついシンバルをまろやかにする。


5.ドラムのクローズマイクにDynamic EQを使用して、音のきらびやかさを調整する。例えば、ドラムを叩いた時には明るさを上げ、叩いていない時には明るさを下げる。これにより、ゲートの使用を減らしたり、時にはゲートが不要になったりする。

といった具合でした。

Low End

Multiband Compと似たような動作、という時点で、Low Endに関しては大体想像が付きます。

 

1.キックの信号をベースのSide Chainにして、キックが演奏されている瞬間だけベースが減少するような設定。特にベースの基礎周波数にあまり影響を当てたくない場合など、細かい作業のときにDynamic EQが便利。

 

2.ベースの音を、超ピンポイントで、特定のタイミングのみコントロールする。

短い文章で、こう書いてあるだけでした。これは別にBassだけに当てはまる事では無いと思いますが、一応Bass Guitarと明記してあったので、そのまま書いてます。

 

3.ドラムの低域をカットすると、サビの部分ではベースの存在感が出て良いが、ブリッジになると、ドラムの音が薄すぎる様な場合。オートメーションでも良いが、時間の短縮も考え、Dynamic EQを導入するのも選択肢の一つ。

 

4.ベースと中低域の音を出しているシンセサイザーとのマスキング。ベースとシンセの低音がぶつかって音が濁る時にDynamic EQを使い、Side Chainで音を分ける。

 

Sonic scoopの記事では、Dynamic EQに固執せずに、普通にMultiband CompとEQ、またはオートメーションの方が上手くいく場合も多い、とも書いていました。大きな変化が必要な時、また細かく周波数などを設定しなくても良い場合は、Multiband Compの方が良い場合も多いのでしょう。 

その他

その他ってなんやねん、って話ですが、上記の記事で具体的に出てきた手法では、殆どVocal、Drums、Low Endへの言及だったのですが、それ以外も少し有りましたので、ここに書いておきます。

 

1.どのオーディオでも起こり得る問題で、特にライブの時はよく起こる問題だが、楽器が原因の共振に対処しないと行けない場合。これは部屋の音響的な問題でも起こり得る。ある条件下で起こる共振を、ピンポイントで除く為に、共振発生時だけ作動するDynamic EQは使い勝手が良い

 

2.アコースティックギターで、特定の音を弾いた時に起こる、Boomy(ブーンって感じの低音)な音の除去。

 

3.トーン的に瞬間的な問題がある音の調整。これはアコースティックギターの例と同じと言えるが、アコースティックギターだけでなく、どの楽器にも言える事である。

 

4.レガートからスタッカートなどがある場合で、極端なダイナミクスをもう少し抑えたい場合。これもどんな楽器にも言える。

 

5.明るすぎるギターを滑らかにする。

 

6.Multiband Compのクロスオーバーポイントで時々発生するリンギングを除去する。

 

7.Compによって信号の高域と低域が潰されてしまうことがあるので、Compの後にDynamic EQを配置して、その音源でCompを使っていない状態のオーディオを、Dynamic EQへSide Chainさせて、激しいCompで失われた帯域幅をダイナミックに回復させるのは面白いかもしれない。

これは一つの提案として紹介されていた手法。記事の中の人も実際にやったことは無いらしい。

 

8.録音や演奏の悪いトラックを修復するためにDynamic EQを使用する。ノイズの調整などにも使われる。例えばストリングスの弓の音のノイズが挙げられていた。

 

随分長くなりましたが、以上がDynamic EQに関して調べたレポートとなります!今回調べて、なんとなーく、Dynamic EQとはどんな使い方するべきか、みたいなのが、なんとなーく、すこーしですが、分かってきた気がします!

以上、ありがとうございました!

 

 

EQについて真面目に取り組んでみる その2~やってはいけないから Part2~

前回と同じ形式

前回の記事

kichizyo.hatenablog.jp

 

と同じで、「やってはいけない」からEQに取り組んでみます。今回の動画はこちらです。

www.youtube.com

 

www.youtube.com

 

またWarren Huart氏の動画を一つです。2つ目の動画も結構再生回数がある有名な動画です。Musician on a Missionの制作者は、QueenやMorterhead等多くの有名なバンドを手掛けた方に師事し、様々なスタジオで学んだ方らしいです。前回の記事と重複する内容、また2つの動画で重複する内容は削っていってまとめます。一応これでやってはいけないからのアプローチは終了して、次の話に取り組みたいと思っています。

前回と同じ様に一つずついきます。長文になると思います!

 

1.問題点は、Mix BusのEQよりも、個別トラックのEQで解決するのが先

Mastering Engineerは、Mix Engineerとは別で、それぞれ別の知識やスキルが必要になる、というのはよく言われますが、マスタリングは、文字通りマスターにEQ等を使い、全体をより良い物に仕上げていく作業です。

その点、ミックスでは、個別のトラックを修正できる、というマスタリングの段階では出来ない事が出来るわけで、そこを有効活用しないといけない、という話でした。

例として、高音がちょっとキツすぎるので、マスターのEQで高音を削る。そうするとギターは良くなったが、ボーカルの良い高音も一緒に削れる、というような事になります。ドラムなんかも、周波数が広い範囲に渡っている事が多いので、BusトラックのEQで無理やり解決しようとすると、同じような事が起こるでしょう。Mix BusでのEQに関しては、また別の機会により具体的に考えていきたいと思いますが、Mix BusのEQは、個別のトラックを十分精査した後に、全体をよりまとめて良いものにするために使いましょう、という話でした。

 

2.明るすぎるMixは良くない。うるさすぎるMixも同じ様に良くない

大きい音や極端な高音は耳を疲れさせる、というのは当たり前の事ですが、人間の耳は普通に会話したりするのに重要な、3~5k辺りの周波数には特に敏感です。この辺りはEQの使用でも十分注意が必要です。

ここでは、休憩の重要性も述べられています。長い間大きな音量でMixをしていると、この辺りの周波数に対して耳が鈍くなってくるそうです。Warren Huart氏は、基本的にDimを押した小さな音量で作業して、たまに大きな音で少しの間聞く。そしてDimに戻る、というような作業をするそうです。でもAbleton LiveはDim無いですよね、、、

 

3.High PassとLowPassを使用しよう

これは前回の記事にも書きましたので省略します。前回も書きましたが、緩やかなFilteringを有効活用するのは重要です。

 

4.EQの使いすぎに注意

沢山のEQ処理を行って、「よし!やったで!」となるのはやめましょう、という内容です。とりあえず一回Bypassしてみて、本当に良くなってるのか確認するのが重要です。人間は、お金を払ったり、沢山時間をかけると、別に何も改善されてなくても良くなった、と思ってしまう、という事を誰かが言っていましたが、確かにそういう事もあるかもしれません。

これはプロでも良くあるんだそうです。いくつかのEQを使って、「う~ん、ココを上げよう、でもそしたらこっちが良くないか、下げよう」とやって、沢山処理した後に、Bypassすると、「あ、何かこのEQ違うわ」となるんだそうです。

こういう時は、ダイナミックEQの使用を提案していました。ダイナミックEQに関しては、また次に書きたいと思いますが、こちらのリンクからDynamic EQとは何か、をサラッと引用します。

blog.landr.com

ダイナミックEQは、従来のEQとコンプレッサーやエキスパンダーに見られるダイナミクスコントロール(音量コントロール)の要素を組み合わせたEQ処理の事です。

ダイナミックEQは従来のEQにある工夫を加えたものです。各バンドごとに固定のゲイン値を設定するのではなく、その周波数の音量に応じて、カットやブーストの強さを変えることができます。

複雑に聞こえるかもしれませんが、簡単に言うと、ダイナミックEQは、入力されたサウンドに応じてEQの量を自動的に調整する機能の事です。

この辺に付いても、具体例を見ながら次に記事を書きたいと思います。

 

 5.ソロボタンを使いすぎちゃ駄目

ロボタンが悪いと言っている訳ではありません。例えばボーカルのDe-essing等、その音の本当に繊細な問題点を探る為にソロボタンは必要です。が、ソロボタンを使いすぎると、その音のみの問題ばかりに集中してしまい、そもそも何でソロボタンで問題を解決しようとしたかが分からなくなる、という問題があります。

Mixの中でどの様に聞こえるかが重要で、全体の中での問題点の解決のために、音を精査すべきで、その為にソロボタンを使うべき、という話でした。ソロボタンのオンオフを細かく切り替えて聞くのも有効なテクニックだそうです。

さらに、ここは2つ目の動画でも言及がありますので、まとめて書きます。2つ目のMusician on a Missionの動画では、ソロンボタンをなるべく使うな。ソロボタンを多用し過ぎの時は、そのトラックのボリュームをあげて、良く聞こえるようにしろ、と言っています。確かに、一度EQに取り掛かっているトラックのボリュームを上げることで、他との関係をある程度残しながら、その音もよく聞くことが出来るので、一つの手法として知っていると良いと思いました。

また、ここではEQのブーストに関しても述べられていますが、それは後ほどまた書きます。

 

6.目的を持ってEQを使う

ここから2つ目の動画に入ります。ここに関しては、序文やその1でも書いていますので、省略します。EQを使うことが目的となってはいけない。EQを使う前に何をやりたいかを明確にすべき、という内容です。Referenceトラックと比較して、なぜ処理が必要なのか、どうしたいのかを明確にして下さい、という事でした。

 

7.EQをカットだけに使わない

これは1つ目の動画のWarren Huart氏も、ソロボタンの時の話の中で言及しています。私もそうでしたが、この考えは結構一般的に存在している気がします。学生時代に先輩に勧められた本に「EQは基本的に音をカットする目的で使うものです。不用意に音を足さないように。」と書いていたのを覚えています。そして、結構そう書いている本は多かったです。例えば、有名所ではこの本とかです。

Mixing Secrets for the Small Studio by Mike Senior

 

洋書にそう書いてるのが多い気もします。でも、これは間違いだという話でした。Warren Huart氏はブーストさせてからのコンプの使用というのは、音をグッと良くする手法と述べていますし、2つ目の動画でも、もうそんな意見は無視して、やりたかったらブーストしろ、って言ってます。ここもやはり、そうする理由が有るのならそうするべきだと思いました。

 

8.BusにもEQを使おう

個別トラックへのEQだけでなく、Busトラック、例えばVocal Bus、Drum Bus等、BusにもEQを使いましょう、という内容です。Drum Bus全体に、Hiを足したい、ギタートラック全体の中低域を絞る、等、一貫性を持たせた音作りが可能です。また、個別のEQで同じことを何度もせずに、作業の短縮の意味もあります。

BusへのEQに関しては、また後ほど書けたら良いな、と思います。最近良い動画を見たので。

 

9.必要がある時は、思い切ったEQingを

これも結構昔から根強く存在している意見です。「3db以上のブーストやカットは避けろ。」「ブーストを極端にやるな。」こういう意見は、普通に結構私も聞いたことあります。これは別に気にしなくていい、という話です。

ただ、Busではそんな極端な事するな、とも言っています。Busやったら1~2DB位が基準やで、との事。

これも、その必要があったらやったら良いんや。スネアとか高音10DB足したかったら足して良いやんけ。音が良くなるなら。との事でした。

 

10.全部にHigh Pass使うな

これも良くある意見です。とりあえずHigh Passぶち込んどけ、という人は結構いると思いますが、普通に考えて、Low Endはとても大事です、特に私がやってるようなエレクトロは、もうLow End大好きな人達ばかりです。

確かにLow Passは、音が団子になるのを避けるために必ず必要ですが、やりすぎると音がスカスカになります。

ここも目的の話になります。Low Endにノイズがある、KickのLowを少しタイトにしたい、そういう目的を持ってHigh Passを使いましょう、という話でした。前述しましたが、緩やかなHigh PassやLow Passも活用すると良いかと思います。

 

11.プラグインにお金と時間を使うな

実に耳が痛い話です。でも、最近になって私もそう思います。プラグインの多くは時間と金の無駄です。プラグイン買う前に、DAWのマニュアルを読んで、本を読んで、様々な情報を集めるべきと今になって思います。プラグインはお金がかかりますし、選ぶのにも時間がかかります。さらにプラグインを使うための勉強も必要です。プラグインを使いこなすのは時間がかかります。そして最後に、どのプラグインを使うのか考えないといけません。

プラグインを買うことが悪いのではありません。ただ、順番が有るはずです。いきなりプラグインで解決、というのはどうなんでしょう。先にMixを勉強してからプラグインを買うべきだ、と最近よく思います。特に序文でも書きましたが、サンプルを沢山使うAbleton Liveユーザーは、そもそもサンプルという完成した音を使っています。本当にそんな沢山のエフェクトが必要なのでしょうか。空気感とか真空管の感じとかよく言いますが、普通にAbleton LiveデフォルトのAmpとかSaturation突っ込んだら解決するのが殆どです。

Mixを勉強するのも、その1で紹介したブログもありますし、Youtubeで飛澤正人氏の動画を見るだけで大体オッケーと私は思ってます。プロの人達が、普通に動画や記事でノウハウを紹介してくれている時代です。記事や動画の作者のプロフィールや作品も調べて、勉強できます。プラグインを買うのはその後で、動画では、1つか2つのプラグインの使い方に精通するのが良かろう、との事でした。まぁ、もちろんプロは別とは思います。

 

12.バイパスボタン使いまくれ

これは当然のようで、結構やってない事があるのではないでしょうか。そもそも比較は、元々のもの、目標とするもの、今目標に近づけて作業しているものの3つで行うものです。元々のものも、大事なリファレンスです。

動画では、瞬きのようにバイパスボタンのオンオフを繰り返す、という手法も紹介していました。

また、この際極端なカットやブーストをした場合、ちゃんとボリュームがオリジナルと同じくらいになるように調整することも重要です。人間は音が大きいものを良いものと考えがちです。

 

13.プラグインの順番気にしすぎ

代表的なのはEQとコンプの順番でしょうか。動画では、プラグインの順番はそこまで重要ではない、とハッキリ言っています。

EQが先か、コンプが先か、というのは、色々話がありますが、それはコンテクスト、つまり状況による、答えはない、との事です。明らかに不要な音がある場合はEQが先、位で良いのかな、と個人的には思っています。

 

14.スペクトラムを学びなさい

どの周波数がどういう働きをしているのかを知るのはとても重要です。以前iZotopeのMixing Guideの訳に、その辺りを書いていましたの、載せておきます。

 

  1. Low End (125 Hz以下)
    Sub bassやBass、そしてKickが主役となる帯域である。この帯域の音は聞こえると言うより、感じるという程度のものである。

  2. Low-Mids (125 Hz – 500 Hz)
    一般的に低音の基礎となる帯域で、この帯域が混雑すると、いわゆる音が団子になるという現象が起きる。Muddyと呼ばれる部分は大体この辺り。

  3. Mid-Range (500 Hz – 2 kHz)
    ほとんど全ての楽器はこの帯域の成分を持つ。Mixでは、この帯域の楽器を、適切に処理するために、多くの時間を使うことが必要となる。

  4. High-Mids (2k Hz – 8 kHz)
    この帯域では、Vocalのブレス、シンバル音、スナップ音系のパーカッション、Kickのハーモニクスアコースティックギターをピックで弾く音などの成分が多い。

  5. High End (8 kHz以上)
    いわゆる空気感や、Vocalの歯擦音が入る帯域である。この待機が強すぎると耳が疲れ、この帯域が弱すぎると、抜けのない鈍い雰囲気のMixになる。

どこをカットして、どこをブーストしているのか、目的通りの場所にあたりを付けれるようになりましょう、との事でした。

 

15.耳を鍛えましょう

そんなんどうしろっちゅうねん、って話ですが、EQを学ぶのに一番いい方法がこれだそうです。どこが問題か分かる耳を持たなければならない、という事です。周波数の勉強と似ていますね。

このサイトで訓練できるで、との事。

www.soundgym.co

 

またこのアプリも紹介していました。

Quiztones: EQ Ear Training

Quiztones: EQ Ear Training

  • The Pro Audio Files
  • ミュージック
  • ¥610

apps.apple.com

 

普通に曲作りまくってEQしまくるほうが良い気もしますが、こういうのもあるんだそうです。

 

実に6千字近い文章です。何かここまで読んでもらってありがとうございます。大したこと無い内容で恐縮です。とりあえず、やってはいけないシリーズはこれで一段落として、またちょっと違った内容を次は書きたいと思います。

本当に長い時間読んでもらってありがとうございました!