Sound Lab Kichizyo

Ableton Liveのアレコレ

EQについて真面目に取り組んでみる その2~やってはいけないから~

やってはいけない事からの分析

基本的にこういうのは、「こうするべき」というのより、「この使い方や考え方は避けるべき」という方が、自由度が高いですし、分かりやすい傾向がある気がしますので、こういうEQの使い方は避けるべき、という所から、様々なプロの方で、素人の私が勝手に「この人たちすげぇ!」と思ってる方々の動画や記事を参考にまとめていこうと思います。

 

ミニマムフェイズとリニアフェイズ

と言いつつ、先ずはミニマムフェイズとリニアフェイズEQの特性と注意点について調べました。

私が色々書くより、間違いなくこちらの記事を参考にしたほうが良かろうと思います。音源まで用意してくれている記事で、とても参考になります。

soundevotee.net

 

よくあるEQ Mistakes

ここからが今回の記事の本論になります。今回はこの動画です。

www.youtube.com

 

多くの超有名バンドのMix Engineerを勤めている、Warren Huart氏の動画です。有名な動画なので、見たことある人も沢山いると思いますが、先ずはココからいきます。タイトル通り、3つのEQ Mistakesに関してです。一つ一つ行きます。

 

1.Sweep EQの手法を使いすぎる

これは、この動画を見るまで、私もやってた間違いです。ちょっとココはしっかり書きたい所です。Sweep EQとは何ぞや、という所ですが、こういった具合に、QとGainを極端に大きくして、

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Frequencyを動かして悪い音を探す。

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そして見つけた悪い音を削る。

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コレを繰り返して、音をスッキリとキレイにする!

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というものですが、コレがいかん、という内容です。というのも、こんなふうに極端な音の聞き方をしたら、悪く聞こえるのが当然である。というのがWarren氏の話です。そもそもEQってこんな使い方するもんちゃう、という事です。この事に関しては、私のような奴が色々書くより、私も読者になっているEki氏のブログに詳しく書いています。

eki-docomokirai.hatenablog.com

 

余談ですが、SOUNDEVOTEEを書いているKojima氏のブログも、Eki氏のブログも、「ホンマこんなん無料で読ませてエエんか、、、」という内容が盛り沢山です。Cubaseユーザーで、決まった自由な時間が取れる生活をしていたら、受講してみたい位です。こういう人たちにMixとか習ったら、ほんとにすぐ上手くなるんだろうな、と思います。

 

で、このSweep EQですが、普通にプロも沢山やっています。ので、私がどうこう言えることでは無いんですが、なんでこういう事やってるんや、というのも、理由があるようです。

例えばこちら。その部分から再生されます。

youtu.be

 

ガッツリやっています。

Eki氏のブログにはこちらも載っていました。

youtu.be

 

ガッツリやってます。

ですが、この動画、2つとも同じ理由を述べています。特に2つ目の動画ですが、この方、クラシック畑から始まり、グラミーも取ってるMix Engineerだそうです。インタビューしている方は普通に笑っちゃっていますが、

”I didn't mix like this, but It's probably what making it sound so good, actually. Mine's probably sound worse because I wouldn't be taking that stuff out.”

みたいな事を言っています。

二人共、この手法をするときは、必ず不要なResonance、つまり、好ましくない反響音のみを選択して削る、という事でした。

私はどちらが良いかは分かりません。ただ単に、個人的にこのSweep EQやりすぎは良くないと、自分のやってるジャンルではそういう結果が多いと思って避けてるだけです。ただ、何が好ましくない反響音か判断できないなら、この手法はそもそも取るべきではないと考えて良さそうです。

 

そして、Warren Huart氏も、Sweep EQが悪いとは言っていません。あくまで極端な手法が悪い、という話です。上記で参照したEki氏も、決してSweep EQの手法を否定している訳ではなく、

  • Qは少し太め(オクターブ間に影響が出るくらい)
  • ゲインは6dB~12dB程度

という、ソフトなスイープを使うべきです。

 と書いていますが、私もこの使い方が正しいと思いますし、実際自分がどの音が他のトラックと聞いた時にマズイことになっているのか、という耳の訓練にもなると思っています。

ただ、間違いないのは、

目的の無いEQは必要ない

という事だと思います。このシリーズの序文にも書いていますが、そもそもエフェクトなんて、無いなら無いだけ良い、というのが私の考え方ですし、目的の無いEQは不要、というのは、誰もが言っている所だと思われます。

 

2.High PassとLow Passを使おう

High Passに関しては、皆さんも普通に使ってると思います。特に私みたいにサンプルたくさん使ったエレクトロ系の音楽とか作ってたら、音数も異様に増えることもありますし、High Passが無かったら低音がメチャクチャな事になります。そういう音も許されてる風潮がこのジャンルには有りますが、、、例えばこちら。

www.youtube.com

 

これはこれで計算されていると勿論思いますが、これは流石に普通は許されないと思います。私はFlying lotusのファンなので、この曲大好きなんですが、初めて聞いたときは「こんなんアリか、、、まぁ、好きなんだからアリか、、、」と思いました。

 

とにかく、High Passはとても重要なのは、もちろんですが、Warren Huart氏はLow Passも積極的に使うことを進めています。

高音を上げると、Air感と良くエンジニアが表現しますが、そういうものが増して、抜けが出ます。ただ、音が薄くなり、耳を疲れさせる、という反面もあります。

良いエンジニアが手掛けた曲は、低音は勿論のこと、高音も非常に計算してコントロールされている、という事でした。

確かに、Air感とか色々有りますが、耳を疲れさせてはいけませんし、そもそも高音にも不要な音は沢山あります。

例えば、Warren Huart氏の動画では、Nordのパートに軽いHigh Passをかけ、さらに高音をしっかり持ち上げた後に、4K以上位をがっつりLow Passかけています。ギターにもLow Passを入れて7~8k位を削って、耳に触る音を削っています。

また、軽いLow Pass、軽いHigh Passも、実に便利だから積極的に使うように、という発言もありました。OffensiveなFrequencyを探しなさい。その際、自分の耳をしっかり信じなさい、との事でした。ここも同じ様に、低音が必要な理由、高音が必要な理由がない限り、思い切って削って良い。という、目的意識がある使い方が重要との事です。そうして作られた音が、本当にクリアな音であると言えます。

 

ちなみにですが、1のSweep EQを使いすぎの所で紹介した2つ目の動画。この方かなり変わった事沢山やってて、件の動画の9:15秒くらいから、異様なLow Passの使い方が出ています。コレは、インタビューのホストも、

「何やこのナンセンスなEQセッティングは!」

って言ってますが、このエンジニアの方曰く、

「レコーディングに使ったマイクの特性が、異様に高音がキツかったんや。ただ、実際ただ高音削っただけじゃなくて、後のプロセスで、適量の高音足してるんやで」

「なるほどな」

というやり取りがありました。私はこういう事しませんし、グラミー取ってるエンジニアに意見するなんて滅相もないっす!って感じなんですが、めっちゃ極端な事というのは間違いなかろうかと思います。ただ、こういうのにも、目的意識があって行っている、という事です。

 

3.EQは全体的な問題を修正するもの

何か変な訳ですが、言いたいことは、「この部分のみに良く作用するEQ」みたいな使い方は駄目。という事です。

例えばWarren Huart氏の動画では、ギターが普通の演奏の部分では、Lowがかなり邪魔になります。だからと言って、Lowをカットすると、ソロの時に物足りなくなる現象が起きています。

こういう時はどうするのか、ですが、EQにもオートメーションを入れて解決します。ソロの時になったら、低音をカットしているEQを切る訳です。

若しくは、後の記事に書いていますが、Dynaimic EQや、Multi band compでの解決、という方法が有ります。

問題点は一つのトラックでもいつも同じとは限らないので、その時その時に対応したEQingをやろうぜ!という話でした。

Dynamic EQとかMS EQとかは、またしっかり調べてやるべきと思いますので、このEQに真面目に取り組むシリーズで後ほど記事を書きます。ちなみに、私ダイナミックEQもMS EQも全然分からず使っていました。まぁ、今も良く分かって無いですけど。この辺りも反省を含めて、また書いてみたいと思います。

 

以上、ありがとうございました!

EQについて真面目に取り組んでみる~序文~

EQ難しいです

この記事は、このシリーズの趣旨と概要を書いたもので、特に読まなくて大丈夫です!

 

先に言っておきますが、私はDAW歴はそれなりに長いだけの素人です。所詮素人の意見ですが、様々な方の意見を参考にしながら、理屈で納得できるようなEQに関しての内容を、記事として纏めたいと思い、9割位自分の為に書いています。もし参考になれば幸いですが、あくまで素人の意見ですので、鵜呑みにしないで下さい!Abletonの使い方は、中級者くらいは出来てると思いますが、Mixはまた別のものですので。

EQはMixやMasteringで最も重要な道具の一つなのは間違いなのですが、難しいです。今まで逃げて来ましたが、一度ちゃんと纏めて記事にしたいと思っていました。

まず、EQに関しては、特にインターネット上では、本当に様々な意見があって、良く分かりません。ですので、自分が見て信用できると思う意見を独断で纏めるのがこの記事です。いくつかのシリーズ記事となると思います。

ただ最初に、良くあるEQレシピ的なもの。例えばギターはココをブーストしてカットだ!みたいなのは、大体当てにしないほうが良い、というのは個人的には思っていますので、それは書きません。

というのも特に私がやってるようなエレクトロ系の音楽では、何か謎の音とか使いますから、そんなんレシピに載ってない、というのが一点。

それと、一例として、ピアノをこうする、とか書いてても、例えばArturiaのプラグインだったら、ピアノこれだけあります。

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どのピアノやねん、って話になると思います。特にMetalとかGlassとか、相当音違いますし、Jazz Uprightとかも、Grandとはかなり違う音が出ます。これが2点目。

さらに最も重要なのは、様々なトラックの中でのピアノですので、その音単体でEQを行う、という事はしないはずです。

自分の耳を鍛えるというのが一番大事とは思いますが、それでも手法や理屈として、こういうアプローチでEQを使ったら良い、というのは有るはずです。そこで、いくつかのYoutubeや記事から、これは専門家であろう、という人たちの記事を纏めながら、書いていきたいと思います。

 

どんな音楽を作っているのか

EQ関係ない内容から書きますが、これはAbletonユーザーには結構大事な事だろう、と思っています。というのも、私も含めて、Ableton Liveを使う人の多くは、サンプルを多用するからです。サンプル音の多くは、すでにEQやコンプなどのプロセスを行われている場合が殆どです。コンプ全然必要ないサンプル音源とか沢山あります。というか、何でコンプ使うのか、とか考えたら、サンプル音源でコンプ不要とか、良くある事と思っています。また、EQに関しても、かなり作り込まれている音も沢山あって、ともすれば過剰なEQの使用に繋がりかねないと私は思っています。

さらに、Ableton Liveユーザーは、サンプルを多く使用し、あまり生楽器の録音をしない、という方も多いと思います。私もたまにギターとベース、シンセとか適当にその辺の音録音したのとか使う程度です。その場合もまた、EQの使用は変わってくる筈です。生楽器を録音しないなら、ノイズも少ないでしょう。フェーズの反転等も、あまり考えなくても良い場合が多いはずです。(余談ですがサンプル販売しているサイトから購入したサンプルでも、位相が反転している事はたまにあります)

ただ、もちろん他のトラックとの干渉がありますので、EQは必要です。ただ、サンプル音を使用する場合は過剰なEQの使用は注意すべきであろうと考えます。必要ないなら使わなくていい、というのが、私の基本的な考え方です。

 

次の記事からどんどん書いていきます。このページにも書き足す度にリンクを貼っていきます!

 

こちらがその1です。

kichizyo.hatenablog.jp

 

その2

kichizyo.hatenablog.jp

 

その3

kichizyo.hatenablog.jp

 

その4

kichizyo.hatenablog.jp

 

その5

kichizyo.hatenablog.jp

MusicTechの記事:Critical mixing advice in Ableton Live 10を纏める

Mix前に読むと良いような記事

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結構基本的な事を多く扱っている記事で、Abletonの機能の活用も書いてあり、「よし!今からMixやで!」という時に一回サラッと読んどくと良いような、色々な注意点や便利機能を纏めた文章が欲しくて、書く事にしました。何度か書いていますが、結構自分で見直す用の記事も有るので、今回もそういう感じです。特に私Mix上手くないので、色々勉強しないとな、と思っています。最近はMixも最小限が良い、とよく思います。前までは色々やりすぎてたなぁ、と。素人ほど色々小賢しい事やりすぎる、というのは、本当にその通りと思います。そんな反省を最近しました。

 

原文の記事はこちらです。

Critical mixing advice in Ableton Live 10: a step-by-step guide

 

Ableton Live使用者の為に書かれている記事なので、他DAW使用の方々は、「こんな機能無いし」という事が結構書かれています。

私が読みやすい様に意訳していますし、私の感想とかちょいちょい入れてるので、細かい所は違うと思いますが、大意がズレてなければ良しとします。因みに、前回もこういった翻訳系の記事を書きました。iZotopeのMixing Guideの記事です。そちらもリンクを載せてみます。

 

Free Guide: Mixing with iZotopeの要点を纏める - Sound Lab Kichizyo

 

結構長い記事になると思います。多分5千字超えますが、自粛中でちょっと時間ある時の読み物に丁度良い長さかもしれません。面倒な方は、ここから作業だけ抜き取った部分に飛んでください!

 

 段階を踏んだAbleton Live 10でのMixing Advice  

 

行ってみます!

Mixで大事なこと

Mixの目標は3つです。その作曲構成において、

  1. 音をより良くする
  2. よりまとまったものにする
  3. より洗練されたものにする

の3つです。正直フワッとしてるなぁ、、、と思いましたが、まぁ良いです。マスタリング出来る状態まで作り上げるのがステレオMixで、Ableton Liveはこれを行う機能を十全に持っています。

また、何かしらの基準やゴールを持つことも大事です。様々な環境で音を聞きましょう。良いモニターヘッドフォンやスピーカーだけでなく、スマホでもタブレットでも、我々が日常で聞くもので、どういう風に聞こえるかを知ることは重要です。様々な音量でMixを確認しましょう。特殊な場合、例えば完成された曲が大音量で流される為、それ用のMix、とか、大音量を出して聞く為のスタジオがある、とか、そういう場合を除いて、Mix作業の音量は大音量でする必要はありません。

 

より良いMixの為に

先ずはリソースの管理について。Buffer Sizeは適正でしょうか。大きくしすぎると、ライブでは影響がありますから、使用目的を考えて設定するのが重要です。Buffer Sizeの変更というのは、ハードウェアとの連携で変更が必要な時があります。

すいません、私これ関係ないから調べてません。ハードにもよると思いますので。

 

フリーズしてからのオーディオ化というのは、CPUの節約にもなりますし、とても便利な機能です。しかし、コレをしてしまうと、音を変える選択肢が少なくなる事を頭に入れておかないといけません。

ここは私の感想なので、どうでも良いのですが、オーディオ化、Resamplingしないと出来ない音作りもあると思いますので、Resamplingする必要がある時は、ガンガンするべきと思います。当然記事の通り、元の音を変える、という事が不可能になるため、Resamplingも目的を持ってやるべきと思われます。

 

また、Mixでは自分の作品に対して、批判的になり、客観的になることが大事です。本当にそのトラックは必要なのか?時間かけたから良いものが出来ると言うわけではありませんので、その辺りをよく考えないといけません。

確かに、だいぶ昔、学生だった頃先生が、「それ以上削る場所が無い曲が完成品だ」と言っていました。今考えると、これホンマその通りやなぁ、って思います。

リファレンストラックを用意しましょう。リファレンストラックでは、

  • リファレンストラックのどこが気に入ったのか
  • そこを実現するために、どんな手法や道具を使っているのか
  • どうやったら再現できるのか

に注目します。

 

音量に注意して下さい。トラックのどれかが-1.0 dBを超えている場合、すべてのトラックを選択して、全体のボリュームをまとめて下げるのは良い手段です。Mixのボリュームの相互バランスを変えずに音量調整できます。

また、リミッター、コンプ、オートメーションの前に、ボリュームを自動で調整するプラグインを使うのも良い手段です。特にボーカルに使うのはオススメです。作業効率が上がります。

記事ではMelda ProductionのMAutoVolumeをあげていますが、WavesのVocal Riderとか、iZotopeのNectarとか、結構色々あります。

 

しっかりと音をまとめる

アコースティックな楽器、もしくはエレクトロアコースティックな楽器(これは普通に演奏するエレキギターとかの事です)は、結構役割がはっきりとした物が多いですが、これらの楽器は、そういう意味では、EQの使用やCompの使用なども、分かりやすい所があります。

しかし、シンセサイザーは、深い低音から高音まで多くの範囲をカバーし、結果としてミックスを圧倒してしまうことがあります。プリセットから簡単に良い音を選んで、何も考えずに音を使うと、Mixのバランスを崩す、というのは良くあることです。

Liveのデフォルトのデバイスはミキシングには十分な性能を持っていますし、それを上手く使いこなして良いMixをする人たちは沢山います。

 

それと、重要な事なのですが、すべてのトラックがリバーブを必要とするわけではありません。なぜそのエフェクトを選んだのかが重要です。蛇足は避けましょう。何かMixのTo Doリストの様な物が有って、それを埋めていくのがMix作業ではありません。自分が目指す音が実現できているかどうかがポイントです。

Warpモードの使い方に関して少しここで説明があります。ボーカルやギターのような長いオーディオテイクを扱う場合は、オリジナルから変わったテンポで演奏する場合や、タイミングの問題を修正する必要がある場合除いて、基本的にWarpモードをかける必要はありません。

多分これは、所謂機械臭くない演奏を活かす為と、Warpで下手にタイミング調整して生じるノイズやズレを危惧して、という事だと思われます。

 

もしWarpを使う必要がある場合でも、クリップを分割して、分割した一部だけにWarpモードを使うという手もあります。

クリップの分割は、Ctrl+Eのショートカットです。ショートカットはガンガン覚えると、本当に作業効率が変わります。基本的な情報はここにメモした記事があります。

Ableton Live 10 マストテクニック50 - Sound Lab Kichizyo

また、上の記事には書いていませんが、Midiトラックの同時編集も覚えておくととても捗ります。同時編集に関しては、公式のこの部分です。

MIDIノートとベロシティを編集する — Abletonリファレンスマニュアル バージョン10 | Ableton

 

細かく分割することで、作業がスムーズになる場合もありますし、新しい音が発生することもあるでしょう。Ctrl+Gのグループ化も重要なテクニックです。Busトラックの作成なので、当然必要です。

もう一つ大事なことは、休憩を取ること。疲れている、音聞きすぎ、行き詰った、そういう時は、その場を離れましょう。散歩に出かける。遊びに行く。何か他のことをして、何かをして、リフレッシュして戻ってくると良いでしょう。見逃していた何かに気づくかもしれないし、新しい楽曲の良さを見つけることもあります。

Mixのしすぎに注意して下さい。そもそも作曲過程の作業中に、ラフなMixを行っている場合が多いので、潜在的な問題は解決している場合もよくあります。MixしなければならないからMixする、というのは間違いです。

 

段階を踏んだAbleton Live 10でのMixing Advice

1.普通は作業の流れでやるべきですが、トラックの名前と色を整理しましょう。

 

2.モニタリングの道具は複数持ちましょう。モニタースピーカーは、特に大きかったり高価なものである必要はありませんが、正確に音が出るものを選びましょう。スピーカーを使う時は、Mixの全体像をチェックする時、ヘッドホンを使う時は細部をチェックする時、という感じで、用途が違いますので、両方必要です。

 

3.Bufferサイズは、音が止まったり、Mixに支障が出ないなら、上げましょう。フリーズをして、CPUの節約をする手もあります。

 

4.ここがMIDI 編集を確認する最後のチャンスと思って下さい。クリップに間違ったノートがないか、Velocityは大丈夫か。また、結構忘れがちで重要な所ですが、ノートの長さは大丈夫か。適当に音を重ねると、当然音が乱れるだけでなく、他のトラックの音を妨げたりすることがあります

 

5.オーディオトラックの確認です。そのWarpモードは必要ですか?ループしないトラックや、タイミングを合わせる必要が無いトラックにWarpを使うのはやめましょう。Warpが必要な場合は、適切なWarpモードを選びましょう。

Warpモードに関しては、音源も合わせて、こちらの記事に載せています。

Ableton Liveでのサンプル編集 Clip Viewを使いこなす - Sound Lab Kichizyo

 

6.オーディオトラックが複数ある場合は、Warpモードの使い方に注意します。例えば10個以上オーディオトラック数が増えると、「いい感じのノリ」が崩れる事が多いです。複数のオーディオトラックを使用する際は、Grooveが崩れていないかよく聞く必要があります。

記事ではこの後コメントがありました。Pushが如何に優れているか、というコメントです。ライブでも普通の曲作成でも、Pushはとても素晴らしいハードです。正直、単純な制作作業では、ハードの楽器以外は、Pushだけで問題ないと思える位です。ライブの為にツマミが足りないなら、適当にKorg NanoKontorolでもあれば上等ですし、私は使いませんが、今はiPad等でTouchableとか使えます。色々有りますが、私はPushがAbletonにとって最高のハードと思っています。それ以上が必要な人は、Pushプラスαで、自分に合った環境構築するのが一番ではないでしょうか。

 

7.Mixで一番重要な機材はEQです。全てのトラックにEQ8を使う場合もあるでしょう。良くある処理では、低音をカットするために、EQ8はとても簡単で便利です。

ここは私の個人的な感想ですが、EQ8は、市販されているプラグインと比べても全く劣りません。Low EndのCutから、MS処理、特定周波数だけのリスニング等まで、様々なEQ処理はEQ8で行えます。しかもデフォルトエフェクトの為とても軽いです。基本的な処理はEQ8で大丈夫と思われます。

 

8. EQ は、あるトラックが様々な別のトラックと、周波数帯がぶつかり合う中で、それぞれのスペースを確保するのに役立ちます。周波数が交差する部分をカットするために使用すれば、他に類を見ないほどミックスをクリアにすることができます。EQの周波数表示や独立したスペクトラムアナライザを使って、何が起こっているのかを視覚化してみましょう。

 

9.トラックの絶対値を決めるために、全トラックにリミッターをかけ、-1.0 dB に設定しましょう。より音圧や音量が欲しい時は、リミッターのGainを触って調整して下さい。

ここは間違いなく賛否両論有ると思いますが、記事にはそう書いていたので、とりあえず訳してみました。私はちなみに、音圧とかボリュームスカスカの曲好きです。そういう人もいると思います。こういう手法もある、位で知っておくのは良いと思います。この記事、結構Limitter押しな所があります。

 

10.もし必要ならば、個々のトラックにコンプを使って良いでしょう。ただ、リミッターの方が便利かもしれません。(多分、トラック全体にかけて、音圧を上げたり音量を調整する目的では、という意味です)コンプは、音色を変えるエフェクトとしても使用するのも良いでしょう。

 

11.サイドチェインは音色の変化や雰囲気の変化の目的でよく使われますが、存在感を殺さない目的でMixでも多用されるテクニックです。Kickをトリガーにした、Bassへのサイドチェインエフェクトは典型的なものです。

この応用として、独特なノリを作るSidechainに関して以前書いた記事がこちらです。

Side Chain Trackを作ってグルーブを作る - Sound Lab Kichizyo

 

12.Utilityデバイスは、Mixの強い味方です。例えば、Bass Monoスイッチで周波数を設定してローエンドをタイトに保ち、Widthコントロールで残りのアウトプットの幅を広げることができます。

Utility Deviceに関しては、もう少し掘り下げた記事を前回書きました。以下がリンクです。確かに、Mixには便利なデバイスです。とりあえずUtility突っ込んでOKです。

Utility Deviceはとても便利 - Sound Lab Kichizyo

 

また元記事ではこの位置にコメントが有ります。未使用のトラックやクリップが膨大な量になってしまった場合、整理整頓しなさい、という内容です。最終トラックには、必要最小限の要素だけが含まれていることを確認して下さい、という事でした。基本のショートカットですが、トラックやクリップのミュートは、任意のトラックやMidiクリップを選択して0を押すだけです。

 

13. 様々なエフェクトを各トラックに使っていると思いますが、Mixingの段階で調整、また新たにエフェクトを追加などする事があるでしょう。このMixの段階で、それらエフェクトが、あなたの曲の中で、どのような脈絡で、どう必要なのかを確認して下さい。これは正しいとか、間違っているとかの作業ではありませんが、望んだ通りにエフェクトが効いているか確認して下さい。

 

14. リターントラックは、Send コントロールを通して、同じエフェクトをすべてのトラックに異なる程度で適用することができます。このリターントラックを使うことで、Mixが均一で、一貫したものになります。Ableton Liveのフルバージョンでは、12のリターントラックが使用可能です。

リターントラックの数を12以上にする方法は、前回記事で書きましたので、ココにもリンクを載せておきます。

Ableton LiveでReturn Trackを12個以上作る方法 - Sound Lab Kichizyo

 

15. グループトラックはMixに大きな変化を与えます。例えばパーカッションやシンセなど、複数ある関連性の高いトラックをグループ化することで、それらを纏めて一つとして扱うことができます。これにより、グループ全体にEQや圧縮、エフェクトを追加することができます。

ショートカットはCtrl+Gです。

 

16.グループトラックを使用するもう一つの利点は、全体のボリューム調整を素早く行えることです。グループ内でレベルのバランスが取れれば、操作するトラックの数を効果的に少なくすることが出来て、管理がはるかに簡単になります。

 

17. マスタートラックにエフェクトをかける必要はありません。グループトラックを適切に使用している場合、基本的にマスターには沢山のエフェクトは必要ありません。リミッターとテープシミュレーターや、その他の音に色付けを少しする程度のエフェクトが、せいぜい使われる位でしょう。

 

18. ミキシングの最終段階は、ステレオミックスをエクスポートすることです。マスターレベルを最大にする事に執着する必要はありません。ボリュームの最大位置以下に設定していて大丈夫です。ノーマライゼーションを使用したり、コンプを使って圧縮したり、リミッターをかけたりはしないで下さい。この辺りに関しては、また次の機会に述べます。

おそらくこれ以降は、また別の過程として、マスタリングの記事で書く。という事だと思いますが、まだその記事は書かれていないようです。近年ではMixとMasteringを同じような流れでDAW内でやってしまう、という事も増えていますが、こちらの記事では、また別の形で、という事だと思います。

 

うーん、書いていて途中で飽きるレベルで長かったです!多分最長かなと思います。読んでもらってありがとうございました!

 

Ableton LiveでReturn Trackを12個以上作る方法

Return Trackの上限は12個

Ableton Liveのバージョンは、現在10.1です。そろそろ11が出てどうなるのか分かりませんが、とりあえずこのバージョンでは、Return Trackは12個までしか作れません。試してみるとこんな感じで、

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右クリックをしても、新規リターントラック作成が出来なくなります。そもそもReturn Trackは12個も要らんやろ、と思われた方が多くいらっしゃると思いますし、実際普通はその通りですが、このReturn Track、結構使いみちが多いです。

例えば以前書いた、Fabfilter Pro-Q 3で、結構間違ったSidechainの使い方をしてた記事があります。

kichizyo.hatenablog.jp

 

この記事の前半部分みたいな使い方もあり、普通のリターントラックとは、また少し毛色を変えた使用方法もあります。

それに、リターントラックにあるエフェクトを入れて、そのリターントラックに対応した、それぞれのトラックのノブにオートメーションを入れたりすると、一つのエフェクトを沢山のトラックにオートメーションをかけたりとかも出来ます。そうするとエフェクトのオートメーションにも統一感が出ます。

 

そう考えると、リターンが12トラックでは足りない!という方も結構居るのではないかと思いました。私も結構ギリギリの時があったので、ちょっと何か方法無いか調べてみたところ、一つ記事を発見しました。こちらです。

www.blackghostaudio.com

 

この記事、結構長いうえに、関係ないこともそれなりに書いているので、リターントラックを増やす部分だけ抜き出して、方法を書いてみます。

ただ一点、この作業、純粋にリターントラックの数を増やすわけではなく、リターントラックと同じ働きの物を作る、というものです。

また、沢山のトラックに使用するエフェクトは、やはり普通のリターントラックでやったほうが、CPUの節約になります。

とりあえずやってみます。

 

例として、Distortionのリターンを作成する

今回では、Mixで言う所のガーリックソースの様な(iZotope Mixing Guide曰く)、ディストーションで試しに作成してみます。

ディストーションの様に、リターントラックで使う場合は、全部には使わないけど、幾つかのトラックで、何種類かを使いたい、また、たまにオートメーションも入れたい。でもそうするとリターントラックが12個じゃ足りない、みたいな時にこの手法が使えます。そんな状況あるんかい、って話ですが、知ってて損も無いですし、とりあえずやってみます。

 

Audio Effect Rackを使う

この時点で方法言ってるみたいなもんですが、先ずはAudio Effect Rackを入れます。この際、画像の赤丸で囲った部分をクリックして、チェーンリストを表示して下さい。

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今回ディストーションは4種類入れたいと思います。Tube系と、Tape系と、Fuzzと、特殊系にします。

先ずは、最初のチェーンをあと4つ作ります。右クリックで作成できます。

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最初にあるやつをオリジナルと名付けます。その後はエフェクトの名前をそれぞれチェーンに名付けます。

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それぞれのチェーンに、任意のエフェクトを入れていきましょう。画像はFuzzです。iZotopeのTrashです。この際、あくまでリターントラック的な使い方なので、私はどれもWet 100%で使っています。

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これで一応完成です。

 

調整はチェーンのボリュームで

このAudio Effect Rackを使ったReturnでは、最初のオリジナルの部分が原音ですね。エフェクトは何も入ってないです。

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これがオリジナルの音で、追加した各チェーンは並列処理で、リターンとして使用できます。リターンをあげたい時は、チェーンのボリュームを上げていくと、リターンエフェクトがかかっていきます。

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同じリターンが必要な場合は、これをコピーして、必要なトラックに貼り付けたら、一応リターントラックの数は、いくらでも増やせる、という事になります。でも、この手法、元の記事にも書いていましたが、やりたい放題プラグインとか使いまくって、コピーして貼り付けまくったら、結構CPU喰います。そこだけ注意して、沢山使いたい時は、デフォルトのエフェクトデバイス使ったら問題ないと思われます。

 

こういう発想次第で、色々応用効くのが、Abletonの面白い所ではないかと思います。以上、ありがとうございました!

Utility Deviceはとても便利

Mixの時に特に便利

Utilityはパッと見全然使えなさそうな、「こんな機能シンセとかについでに付けられてるやろ」的な感じがありますが、とりあえず突っ込んどいたら、とても便利なデバイスです。

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特にMixでは便利です。最近は殆ど全トラックにUtility突っ込んでいます。全然軽いですし、そのくらい実は便利である、という事を書いてみるのが今回の記事です。

 

位相

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先ずは位相に関して。普通にMidi音源ばかりで曲を作っている人にはあまり関係無いですが、実際にレコーディングした音なんかで、位相の反転が起きていて、音を打ち消す、とかよく聞きます。また、実は普通に販売しているサンプル音なんかでも、位相が逆になっているのはたまにあります。

というのも、位相を逆にすると、何となく変な感じのステレオ感が出て、それを狙っている人も実際居ます。位相が反転してるかどうかは、WavesのPaz Analyzerが軽くて見やすいかと思います。Pazのスペアナはいまいちですが。Anti Phaseって書いてる所が逆相の部分です。もちろんその他も位相の反転見れる道具なんて沢山あります。

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この位相を、上記画像の赤丸部分で変えれる機能がUtilityには付いています。

 

チャンネルモード

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見ての通り、ステレオにするか、左の音だけにするか、右の音だけにするか、を決めます。分かりにくいのはSwapですが、これを選択すると左右を入れ替えます。

 

Width

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Width部分ですが、ステレオ幅を調整出来ます。0にするとMonoになります。Monoにする時は、その下のMonoボタンを押せば一発です。

で、Bass Monoですが、これを押すと、その下の周波数で設定した数値以下の部分をMonoにします。どんなものか聞いてみましょう。適当なサンプルを選んで、最初の4小節はそのまま。次の4小節は、ちょっと極端にするため、以下の画像の設定にしました。

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500hz以下はMonoです。聞いてみます。

soundcloud.com

 

確かに違いが出ています。Monoにしなくて良い所までMonoになっています。これは極端な使い方ですが、トラックの低音をタイトにしたいときなんかに使えるのではないでしょうか。ただ、何でもかんでもコレやると、低音が真ん中に集まりすぎて、余計に低音が分からなくなったりする時もあります。何事も程々ですね。

それと、周波数を設定する横のヘッドフォンボタンで、Monoにする音だけをソロで聞けます。

 

また、意外と知られていない機能ですが、このWidth調整のツマミを右クリックすると、MSモードに切り替えれます。

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MSモードでは、一番左に回すと100M、一番右に回すと100Sです。100MでMonoになります。100Sでサイド信号のみです。100Sになると、位相が完全に逆相になり、サイドの音だけです。

ここの注意点が、設定値が0から100Mでは、ステレオとモノラルをコントロールする機能ですが、0から100Sではステレオと同時にAnti Phase、逆相の信号が強調されます。ですので、100Sでは完全に逆相の音となります。

Paz Analyzerで言うと、以下の画像で、赤丸から水色丸に音が向かっていく感じです。何か分かりにくくてすいません。

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OutputとBalance

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これはまぁ、良かろうかと思います。ミキサーのボリュームフェーダーと、Panのツマミがここにあると思ってもらえれば良いかと思います。

有る方は、MixerのフェーダーとかPanのツマミを基本的に一切動かさず、全部Utilityのこの部分でやる、と言っていました。オートメーションだけMixerの部分を使う、との事です。私は「普通逆じゃない?」と思ったので、ボリュームとPanのオートメーションは、全部このUtilityで行う様に使い分けています。Mixerのボリュームフェーダーや、Panつまみで、オートメーションは書かない様にしています。

 

MuteとDC

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MuteとDCですが、Muteはそのままです。これも私はオートメーションの時はここを使っています。Mixerではなるべくオートメーションをしないように統一しています。

で、このよく分からないのがDCですが、こういうのは音響のプロの人たちの説明を見てもらうのが分かりやすいと思いますが、私は凄くざっくりと、変な低音が入ってるから、聞いても違いは分からんけど、メーターに異常が出る、位の解釈です。違ってたらすいません。

ただ、このメーターに異常が出たら、コンプとか反応しちゃうので良くない、という話になります。基本的に、ハイパスフィルターで、その変な低音をカットしたら大丈夫と言われていますが、それをここで出来ますよ、というのが、このDCボタンなのだそうです。この現象、実は無料のサンプルとかを、適当なサイトとかで取ってくると、たまにあります。でも、私はハイパスフィルター使ってます。どうせEQ入れる事が殆どですし。DCボタン使ったこと無いです。すいません。

 

こんな感じでUtilityの説明となります。パッと見、何かあんまり使えなさそうなUtilityですが、実は多機能なので、とりあえず突っ込んで、一箇所で様々な設定を素早く変えるのに便利なデバイスです。

以上ありがとうございました!